出過ぎたり泡立ったり…尿の変化は腎臓を知る手がかりに

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 気温がグングン上昇し、水分補給が大切な季節がやってきた。自分では十分補給したつもりでも足りずに、尿量が少なくなるなど、これからはおしっこに変化が出る時期でもある。ときにはそれが人体の要である腎臓を知る手掛かりになるから注意が必要だ。「松尾内科クリニック」(東京・桜新町)の松尾孝俊院長に聞いた。

 腰の背中側に2つある腎臓は血液をろ過して体内の老廃物や有害物質を取り除き、余分な水分とともに体外に排出する“おしっこ製造機”のイメージが強いかもしれない。しかし最近は、多くの臓器と情報を交わして臓器を制御することで生命維持に貢献していることがわかってきた。

「心臓が送り出す血液の4分の1が集中する腎臓は、血液を管理する司令塔でもあります。365日24時間働いて、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、リンなど水分やミネラルの調整をして、きれいな血液を全身に供給するほか、EPO(エリスロポエチン)やレニンと呼ばれるメッセージ物質を放つことで『酸素の運び屋』である赤血球の量や血圧を調整します。骨づくりに必要なビタミンDを活性化する働きもあり、ホルモンを産出したり、活性化したりする役割もある大事な臓器です」

 最近では腎臓が寿命や老化に関係していることも報告されている。

「血液中のリン濃度が少ない動物ほど寿命が長いことがわかっています。主成分がリン酸カルシウムである骨は、腎臓と絶えず会話を交わし、血液中のリン濃度が高くなると『リンは足りています』というメッセージ物質(FGF23=線維芽細胞成長因子23)を出します。腎臓にはその受容体があり、この情報を受けて血液中のリン濃度を調整しているのです。腎臓の機能が失われると、血液中のリン濃度が過剰になり、血管内皮にリン酸カルシウムが沈着して血管が石灰化。血管が硬くなり、血管が狭窄したり、血栓ができたりして、脳梗塞や心筋梗塞を起こすのです」

■体内環境を整える司令塔

 腎臓は、心臓、肝臓、肺、脳、腸、骨などあらゆる臓器と深く関わっているため、どこかが悪ければ腎臓に悪影響が出る。例えば、心臓のポンプ機能が衰えれば、血流が減り、常に大量の血液を必要とする腎臓はダメージを受けてしまう。逆に薬を飲んでいれば、それを代謝する腎臓の大きな負担になるだけでなく、他の臓器にも影響がゼロというわけではない。

 ところが、「沈黙の臓器」と呼ばれる腎臓は、その機能が破綻する寸前まで自覚症状が表れにくい。

「腎臓の機能を調べる血中クレアチニン値は、男性が0・65~1・09㎎/デシリットル、女性は0・46~0・82㎎/デシリットルが基準です。そこからはずれた数値で、疲れ、だるさ、むくみなど腎臓病特有の複数の症状があり、おしっこにも変化が表れれば、腎臓の機能低下を疑うべきでしょう。例えば、尿量が減るか出なくなった場合です。おしっこをつくる腎臓の能力が極端に低下しており、急性腎障害を起こしている可能性がある。すぐに病院に行くべきです」

 逆に尿量が多いのは、単なる水分の取り過ぎや糖尿病など以外に、慢性腎不全の初期症状かもしれない。体内の保水機能が低下して多尿になる「尿崩症」のなかには尿濃縮を指示するホルモンが出ていても、その作用部位である尿細管に異常が起きて多尿になる「腎性尿崩症」もある。

「おしっこをしたときに泡立ち、その泡が蜂の巣のように大きく、時間が経っても消えない場合は、おしっこに本来は混じるはずのないタンパクが含まれている疑いがあります」

 健康な人の尿の色は淡黄色から淡黄褐色だが、赤褐色や茶褐色など血尿の疑いがある場合は、尿管の一部が傷ついている可能性もあるが、急性腎炎や腎結核、腎がんかもしれない。白濁の場合は腎盂腎炎も疑われる。

「尿の見た目だけで腎臓の機能低下は判断できません。これらはあくまでも、腎臓病特有の複数の症状と重なった場合での目安です」

 ちなみに腎臓を守るには、「不必要な薬やサプリメントは飲まない」「医師が処方した薬は用法・用量を守る」「汗をかく夏場は高血圧の薬を減らす」など薬との付き合い方を変える必要がある。

 さらに、適度な運動と十分な睡眠、禁煙と節酒、タンパク質の過度な摂取に注意することだという。

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