実録 父親がボケた

<7>出かけたまま帰り道が分からなくなり工場に“不法侵入”

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 実は10年前、私はある取材で「成年後見制度」を知った。両親がボケて管理できなくなる前に、私が後見人になるという提案をしたところ、父は怒りで黙り込み、母には「親をバカにして!」とひどく叱られた。決して非情な提案ではなかったと思うのだが……。

 さて、要支援1の父はリハビリデイサービスを続けてはいたものの、脚力が回復する兆しはまったくなかった。そして、“事件”は起きた。

 2016年夏。父の携帯電話から着信。出てみると、知らない男性の声。「〇〇製作所のSと言います。実はうちの敷地内で座り込んでいて」と言う。父は倒れているのではなく、座り込んで動けない状態だというのだ。場所は父の自宅から徒歩5分の工場である。

 電話を父に代わってもらい、歩いて帰れと諭しても要領を得ない。Sさんに「敷地の外に追い出すか、タクシーに乗せるか救急車を呼んでいただけますか?」とお願いするも、本人が大丈夫と言っている場合は救急車も来てくれないし、タクシーもつかまらない。話には応じるが動かない父に、困り果てているという。

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吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

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