がんとは何か

<7>「環境」か「宿命」か 世界的学術雑誌が真っ向対立

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 もし、がんの60%以上が内因的要因による不運な出来事の連続で起こるのなら、それほど発がん物質などに神経質になる必要はないようにも思える。元東京大学医学部長(病理学)で現同大名誉教授の石川隆俊氏が言う。

「自然界では短命の生物は感染症などで死ぬため、がんで死ぬことはほとんどありません。がんは長生きする生物の病気でがんの罹患率は年齢が高くなればなるほど高くなる。それは人間も同じです」

 実際、2016年の日本人の年齢階級別がん死亡率(全部位、人口10万人対)で見ると20~25歳と85歳以上とでは3000倍近い差がある。

「食事や住まいなどの生活スタイルはまったく違い、仕事も学歴も違う。それなのに集団で見ると、見事に40歳を超えるとがんが増えていく。高齢化ががんの最大のリスクであるのは間違いない。ただし、年齢だけががんの原因なら、40歳を超えるとがんの患者数や死亡者数は直線的に増加するはずです。ところが実際はカーブを描いている。つまり、がんの原因はベースが年齢であって、それ以外に複数の原因が重なりあって起きているのだと考えられます」

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