子供の発達障害で知るべき「感覚過敏と栄養不足」への対策

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 発達障害と診断される子供が増えている。全国の公立小・中学校で「通級指導」(通常のクラスに在籍しながら障害に応じて特別指導を受ける制度)の子供の数は平成28年度に9万8311人。これは10年前の2・3倍で、その多くは発達障害だ。予備群も少なくなく、「わが子は将来、社会でやっていけるのか」と不安を感じる中高年もいるはずだ。しかし、親が感覚過敏の世界を知り、正しく対応すれば心配ない。発達障害治療の専門医で「どんぐり発達クリニック」(東京・千歳烏山)の宮尾益知院長に聞いた。

「発達障害の人の行動が周囲から理解されにくいのは見え方、聞こえ方などの感覚が、多くの人と異なっているからです」

 発達障害とは生まれつきの脳の特性により、社会生活に困難が発生する障害のこと。コミュニケーションが苦手でこだわりが強い「自閉症スペクトラム障害」(ASD)、不注意で落ち着きがない「注意欠陥多動性障害」(ADHD)、読み書きや計算など特定の学習分野が極端に苦手な「学習障害」(LD)などがある。その多くは感覚過敏があり、最近はそれがどのようなものか、わかるようになってきた。

「多いのは聴覚過敏です。3階にいても1階で鉛筆を落とす音が聞こえるほど、音に敏感だったり、教室で先生が話をしていても、近くから大声で怒鳴られていると感じる。しかも、自分に必要な音を選択して聞くことができにくい。だから雑踏、お店などでは音の洪水にさらされ、会話が成立せず苛立ってしまうのです」

 視覚過敏だと気になるモノをひときわ大きく感じたり、光を恐れたりする。

「たとえばイチゴの表面のブツブツがクローズアップされ、恐怖感からイチゴであることがわからなくなります。また、必要以上に太陽光や蛍光灯の光をまぶしく感じます」

 文字列が曲がって見えたり、文字の周りの白い部分が明る過ぎて黒い文字が見えなくなったりする場合もある。縦書きは読めても横文字が読めず、英語が苦手という子も。多くの人が気づかないささいな変化に敏感なため、パニックになることもある。こうした子供たちは一度見たものを記憶する能力が高い。突然過去の記憶が思い出されて、急に喜怒哀楽が表れる。

 ほかにちょっと触れられただけで、体を掴まれたり、拘束されたように感じ、必要以上の怒りを感じることもある。

「感覚過敏には多くのパターンがある。親は子供をよく観察し、それに合った工夫が大切です。雑踏でヘッドホンをする、手を握るなど“予習”させた上で声を掛けるとか、物の一部だけを見て全体がわからなくなるなら、片目ずつ見るように指導するなどです」

 子供に居心地の良い空間をつくるのはいいが、過剰になってはいけない。

「子供時代に対人関係が苦手で空気が読めなかったり、じっとしていられなかったとしても、経験を積み重ねれば弱点を補えるようになる。摩擦を恐れて過保護にならず、場面ごとに自分以外の人がどのように感じるかを繰り返し教えましょう」

■ビタミンサプリや乳酸菌を活用

 発達障害があるからといって、将来必ず引きこもりや不安障害になるわけではない。

「これらは発達障害の二次障害です。原因は『自分はダメなんだ』との自己肯定の低さ。そうならないように普段から褒めることが大切です。それでも周囲との摩擦が強く、本人が自己肯定できないと感じたら、転校など環境を変えるのも手です」

 もうひとつ重要なことは栄養不足を防ぐこと。発達障害の子供たちは感覚過敏ゆえに偏食となり、栄養不足になりがち。それを正すことが、将来の自信につながる。

「こういう子供たちは、噛んだ時の嫌な感覚や喉に張り付いて吐いた記憶、見た目が怖いといった理由から食べられないものが多くなる。キノコ、ナス、臭いの強いニンニクや果物が代表です。ただ、給食を嫌々食べているうちに偏食が直った子供も多い。嫌がる食材を避けるのではなく、別の食材と混ぜるなど工夫して楽しく食べさせましょう」

 それでも不足しがちな栄養素を補うために、サプリメントを使うのもいい。

「ASDの人は糖質を好み野菜やタンパク質が不足しがちで、脳の神経伝達物質の材料となるアミノ酸が足りません。アミノ酸は19種類のうち10種類は食品から摂取しなければなりません。一日に必要なアミノ酸やミネラル、ビタミンが入ったマルチビタミンやマルチミネラルがお薦めです」

 また、発達障害の人は腸内細菌のバランスが悪く、栄養摂取の働きが低下しがちで、神経伝達物質のセロトニンを合成するトリプトファンを腸から脳に送り込みにくい。

「そのため乳酸菌と食物繊維で腸内環境を整えることも重要です」

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