心臓移植はうまくいっても、今度は免疫抑制剤による動脈硬化のために冠動脈の狭窄が起きて、冠動脈バイパス手術やステント治療を追加する必要が出てきます。これは心臓移植の“アキレス腱”ともいわれています。iPS細胞でも、現時点では誰も気が付いていない問題がいずれ起こるかもしれません。
とはいえ、iPS細胞を使った再生医療でしか命が助からない患者にとっては、最後の大きな“救い”になり得る画期的な治療法です。また、仮にがん化が起こったとしても、どれくらいのスピードで、どの程度まで悪性化するのかは誰もわかりません。結果的に患者さんのQOL(生活の質)が劇的に改善する可能性もあります。それだけ、期待が大きい治療法なのです。
私はiPS細胞の原点は手塚治虫さんの漫画「ブラック・ジャック」にあるのではないかと考えています。作中、主人公ブラック・ジャックの助手を務めるピノコという小さな女の子が登場します。このピノコは、実はある女性患者の体にできた奇形腫の中にバラバラになって収まっていた脳、内臓、手足などを摘出し、ブラック・ジャックが人型に組み立てた女の子です。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」