がんと向き合い生きていく

「大自然に生かされている命の喜び」患者の言葉を実感した

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 入院後、点滴による抗がん剤治療が始まりました。1回目の治療後から腫瘤は明らかに縮小し、3回目終了の頃には瘢痕程度になって、そして5回目の頃には全く分からなくなりました。

 Gさんは埼玉県のある山あいの町に住んでいました。入院中、治療効果が明らかになった頃から、Gさんはとても明るくなり、自分の家の畑のことを盛んに話されました。「汗を流して自分で耕すけど、野菜もイモも自然が恵んでくれるんです。土と太陽と雨とで育つの。大自然の恵みは素晴らしい。私たちには大自然に生かされている喜びがあるのよ」

■摘みたてののアスパラガス

 Gさんはすっかり元気になって、外来での通院治療となりました。治療開始から約1年半が経った翌年6月、外来の診察に来られた際のことです。この時もGさんはとても元気で、1カ月後の再診予定をして帰られました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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