しばらくしてから看護師さんが「診察室の外に置いてありました」と白い小さなビニールの袋を持ってきました。Gさんからの手紙とアスパラガスでした。
「けさ、家を出る時に、うちの畑のアスパラガスを10本摘んできました。持ってきてはいけないのは分かっているのですが、大自然に生かされている命の喜びは、摘んだばかりのアスパラを食べると分かるのです。先生に知ってほしいと思いました」
私は看護師さんに、「困ったな。Gさんは帰ってしまって、もう返せないだろう。今日の僕は当直で家に帰れないし、あなたにあげるから持って帰ってくれる?」と渡しました。
それから2週間後のことです。Gさんは急に痙攣が起こって救急車で緊急入院されました。
意識がなく、CTスキャンを見ると、脳幹部という呼吸では最も大切な部分にがんが転移しています。緊急で放射線治療を開始しましたが、5日後には亡くなられてしまいました。
がんと向き合い生きていく