コントロール不良の喘息にしびれが…疑べき重大病とは?

治療が遅れれば、心障害などの後遺症
治療が遅れれば、心障害などの後遺症(C)日刊ゲンダイ

 喘息持ちで手足にしびれを感じたら、「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)」を疑った方がいいかもしれない。東北大学病院臨床研究推進センター特任教授の石井智徳医師に聞いた。

 EGPAの典型的な発症の流れは、「思春期以降に喘息を発症↓数年間、コントロール不良の喘息が続いた後、手足に軽いしびれが出てくる↓そのうち麻痺が出たり、体のあちこちに力が入らないところが出てくる。足首が上がらず歩きにくくなるケースが多い↓心臓や腎臓が悪くなる」。

 麻痺や歩きにくくなるような症状に見舞われる人は多くはないだろうが、喘息やしびれはそう珍しくない。推定喘息患者800万人という数を考えると、周囲に1人や2人は「EGPAを疑って病院を受診した」といった声があってもいいが、この病名を聞いたことがない人がほとんどではないだろうか?

「日本におけるEGPAの推定患者数は約2000人。有病率は100万人に対し17・8人と非常に少ない。この数字が本当に正しいのか、というのが問題。もっと多いのではないかと、我々専門医は考えています」

■治療が遅いと心障害などの後遺症

 石井医師によれば、喘息で医療機関を定期的に受診していても、しびれを喘息と関係があると考えない。だから、医師に相談しない。医師も喘息患者に、しびれの有無を積極的には聞かない。

「EGPAが見逃される可能性はかなり高い。診断・治療が遅れれば、末梢神経障害や、心障害・腎障害などの後遺症を残します。麻痺なども問題ですが、手足のしびれは夜も眠れないほどひどい人もいます。30~50代で発症し、社会的な影響を受けやすい」

 EGPAは、血管炎のひとつだ。血管炎は、血管に原因不明の炎症が起こる疾患の総称。EGPAの場合、白血球の一種で、喘息にも関連している好酸球が血管や気道に集まり、組織を破壊して炎症を起こす。

 EGPAは、①血液検査で、好酸球が増加していないか、ANCA(抗好中球細胞質抗体)が陽性でないか②各種障害の検査で、神経障害、皮膚病変(皮疹が出る)、心病変、腎病変、肺病変、消化器病変などはないか③病理所見で、壊死性血管炎、好酸球性肉芽腫などがないか――で調べる。

「ANCAは必ずしも陽性になると限らず、その率は30~50%程度。早期発見を難しくする原因になっています」

 なお、EGPAによる臓器障害で、特に問題となって存続するのは、手足のしびれなどの神経学的症状42%、心血管症状15%。ほかの血管炎と比べてこの2つが多い。

 EGPAの治療では、ステロイドホルモンがよく効く。しかし投与量や投与期間について一定の基準はなく、長期投与になると、骨粗しょう症、糖尿病、白内障、ムーンフェースなどさまざまな副作用や合併症を伴い、再燃のリスクもある。

 そこで免疫抑制剤が併用されてきたが、先日、「既存治療で効果不十分なEGPA」に対し、新薬が承認。「IL―5(特殊なタンパク質であるサイトカインの一種)」の働きを阻止し、好酸球の増殖、分化、浸潤、活性化、生存を抑える。

 治療の選択肢は増えた。いま最も求められるのは、EGPAという病気の存在を知ること。繰り返しになるが、「コントロール不良の喘息+しびれ、麻痺」があれば、早めに自己免疫疾患を診ている科を受診すべき。

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