がんと向き合い生きていく

「心の悩み」が身体にがん症状を起こす場合がある

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 しかし、いよいよ腹痛が強くなって消化器内科を受診したところ、S字状結腸がんが見つかりました。しかし、その時はすでにがんが肝臓に多数転移していました。腸閉塞になる危険があり、がんを含めてS字状結腸切除術を受けました。肝転移に対しては動注化学療法が行われましたが、その後およそ6カ月で亡くなられました。

 一緒に働いていた36歳のM医師(男性)は、K看護師が左下腹部を痛がっている場面に何回か遭遇していたそうです。K看護師が亡くなった後、M医師は自分でも不思議に思うほどK看護師と同じように左下腹部に痛みを感じるようになり、便通も悪くなったといいます。M医師は1カ月後の海外での学会を控え、発表で使用するスライドがなかなか完成せずに、イライラしていました。左下腹部の痛みの回数も増えていきました。そして、いよいよ消化器内科を受診した時は、自分もがんであると確信するほどでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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