大阪で震度6弱の地震 被災地で気をつけたい健康のこと3つ

“帰宅難民”もあふれた
“帰宅難民”もあふれた(C)共同通信社

 大阪で発生した震度6弱の大規模地震。現時点で4人の死亡と300人を超える負傷者が確認されているが、災害時の健康被害はこれからが怖い。

 震災などの災害の後は心筋梗塞や脳卒中といった脳・心血管疾患の発症が増える。被災者が強い精神的ストレスを受けることが大きな原因だ。

 東邦大学医学部名誉教授で平成横浜病院健診センター長の東丸貴信氏が言う。

「被災者の多くは、余震への恐怖や不安、普段とは異なる慣れない生活による不眠など多くのストレスを抱えています。そうしたストレスを克服するため、体内では交感神経や脳の視床下部―副腎皮質の働きが活性化して、炎症性サイトカイン、ストレスホルモンのコーチゾル、神経伝達物質のノルアドレナリンやアドレナリンなどが大量に放出されます。これらは血圧や脈拍を上昇させる働きがあり、それに伴って血管が硬くなったり、血液が固まりやすくなる。そのため、心筋梗塞や脳卒中といった脳・心血管イベントを起こしやすくなるのです」

 被災のストレスによって収縮期血圧が15~30㎜Hgも上昇するといわれている。それまでは正常だった人も一時的に高血圧になる。高血圧の人はなおさら危ない。

 東日本大震災の被災地では、急性大動脈解離の患者が震災前に比べて2・2倍に増えたことが報告されている。主に高血圧が原因で、心臓から全身に血液を送り出す大動脈が急に裂けて突然死するケースも少なくない。被災地では普段以上に血圧に注意する必要があるのだ。

「ストレスによる交感神経の活性化は、食塩感受性も高めます。保存食は塩分が多く含まれているものが多いので、被災地での食事によっては高血圧に拍車をかけるケースもあるのです。血圧の上昇が一時的なものなのか、治療が必要なレベルなのかを見極める意味でも、血圧はしっかり把握することが大切です」

■脳・心血管疾患の発症が大幅アップ

 被災者が受けるストレスは心臓そのものにも悪影響を与え、「たこつぼ心筋症」を引き起こす危険もある。

「強い精神的ストレスによって心臓の筋肉が収縮しにくくなり、左心室がたこつぼのような形で膨らんだまま動かなくなる病態です。すると、心臓から血液をスムーズに送り出せなくなり、胸痛、息切れ、圧迫感、全身の倦怠感といった症状が表れるのです。急性期には、危険な不整脈や心破裂といった命に関わる合併症を招くケースもあります」

 たこつぼ心筋症は、2004年に発生した新潟県中越地震で数多く確認され、2016年の熊本地震でも報告されている。「何かおかしい」と感じたら、早めに医療機関で診てもらったほうがいい。

「脱水」も、脳・心血管疾患を引き起こしやすくする。

 体内や血管内の水分が不足すると血液の中の塩分が増え、血圧が上がり血管抵抗が上昇する。脱水では心臓が送り出す血液量も減少して血液がドロドロになり流れにくくなる。すると、ポンプである心臓はそれだけ大きな力が必要になり、負担が増大してしまうのだ。また、ドロドロの血液は固まりやすく、血栓によって血管が詰まる危険性が高くなる。そのため、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクがアップする。

 ライフラインの復旧が遅れている場合、飲み水を節約したり、トイレの回数を減らすために水分摂取を控えていると、気付かないうちに脱水状態になっているケースも少なくない。喉の渇きを感じなくても、こまめに水分を摂取したほうがいい。

 気象庁は、今後1週間程度は震度6弱程度の地震の恐れがあるとして警戒を呼びかけている。被災者の多くは強いストレスを受けていることを知り、血圧、自覚症状、脱水には十分に注意を払うことが命を守ることにつながる。

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