O型血液は特別なのか?

<3>心筋梗塞や脳梗塞、エコノミー症候群になりにくい?

O型は血栓ができにくい
O型は血栓ができにくい(C)日刊ゲンダイ

 血液が血管内で凝固したものが「血栓」です。ある程度大きいものは血管を塞いでしまうため、命に関わることもあります。脳梗塞と心筋梗塞は特に有名です。また肺の血管で詰まれば、肺塞栓症(エコノミークラス症候群)を引き起こします。

 O型血液は固まりにくいため、外傷などには不利ですが、逆に血栓ができにくい分だけ、これらの病気に襲われるリスクが低めであることが知られています。

 特に差が大きいのが、足などの静脈にできる血栓です。血流が緩やかになるため、血栓ができやすくなるのです。できた血栓が大腿部の太い静脈を塞ぐと「深部静脈血栓症」になります。足全体がむくみ、痛みが生じます。

 しかし血栓が剥がれて心臓に向かって流れ始めると、もっと危険です。心臓の右心房から右心室を経て、肺動脈へと流れていき、肺内で血管を塞いでしまうのです。これが「肺塞栓症」と呼ばれる病気です。細い血管なら、多少胸が痛んだり、息苦しくなったりする程度で済みますが、太い血管が詰まると、激しい痛みや呼吸困難に襲われ、命を落とすこともあります。

 避難生活などで、狭い場所に長時間じっとしていると、リスクが上がります。また、がんなどの大手術の後も危険で、外科医がもっとも恐れる合併症のひとつになっています。

 血が固まりにくいO型は、非O型(A・B・AB型)と比べて深部静脈血栓症や肺塞栓症が少ないことが、以前からある程度、分かっていました。2016年にはデンマークとスウェーデンの研究者たちが行った研究で、詳細な数字が明らかになりました。1987年から2012年までに両国で献血を行った111万2000人(O型44万6000人、非O型66万6000人)を追跡調査するという大規模な研究です。

 調査期間中に、合計9170人が静脈血栓症を発症しましたが、血液型による発症リスクを計算したところ、非O型はO型と比べて、肺塞栓症で1・75倍、深部静脈血栓症で1・92倍、その他の静脈血栓症で1・53倍、リスクが高いことが示されたのです。特に、妊娠中の女性では、トータルで2・22倍もリスクが高いことが確認されました。静脈系の血栓症でO型が有利なのは、もはや疑う余地がありません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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