子作り治療 最前線

女性にとって40代前半は妊娠の「最後のチャンス」

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 不妊の最大の原因は加齢。30代後半の女性の自然妊娠率は15%ほどだが、40歳以上になると一気に5%に低下する。不妊治療専門施設「はらメディカルクリニック」(東京都渋谷区)の原利夫院長は「女性にとって40代前半は妊娠の最後のチャンス」と言う。

「30代前半であれば、タイミング法や人工授精などの一般的な不妊治療を半年ほど行って妊娠を目指してもいいと思います。しかし、40歳前後なら時間がもったいない。最初から『ART(生殖補助医療)』を始めるべきです。それでも42歳以上では、妊娠成功率は急激に低下します」

 人工授精は、精子を採取し、洗浄・濃縮して受精しやすい状態にしてから子宮内に注入する方法。その後、精子は自力で子宮内を進み、受精、着床という自然妊娠と同様の流れで妊娠に至る。

 一方、高度不妊治療のARTは「体外受精」や「顕微授精」など、体の外で受精させて子宮内に戻す方法をいう。晩婚化に伴いARTで誕生する出生児は年々増加していて、いまや国内の新生児の約20人に1人になる。

「体外受精は月経開始3日目から排卵誘発剤を使うことからスタートします。11~14日目に採取した成熟卵子を数時間培養後に、精子と受精させます。そして、2~5日後に培養した受精卵が『胚』の段階に成長したら子宮に戻す。胚移植から約2週間後に妊娠判定をします」

 しかし、体外受精を行っても良好な胚ができない、精子が悪く容器内で自然受精しないなどの場合、顕微授精を検討する。

 顕微授精は体外受精の一種だが、異なるのは受精の方法だ。卵子1個に対し、1個の精子をピペット(先端の細いガラス管)で卵子内に直接送り込む。精子が1個しか採取できなくても受精させることができるので、運動能力のない精子や精巣から取り出した精子細胞でも受精が可能だ。

「これらのARTに欠かせない技術が『凍結融解胚移植』です。排卵誘発で採卵した周期はホルモンバランスが崩れていて、子宮環境が最良の状態ではない。そこで、いったん胚を凍結し、別の周期に融解して移植することで着床率が高まるのです。それに1回の排卵誘発で5~6個の卵子が取れるので、残った胚は移植
に失敗した次の治療や第2子の治療に使えます」

 同院の年齢層で見たARTの妊娠成功率は、体外受精は37~41歳で約25%、42歳以上は約13%。顕微授精は37~41歳で約34%、42歳以上は約9%という。

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