血液型は、人類が進化の過程で、感染症に対抗するために獲得した形質のひとつだと考えられています。とくに有名なのが、マラリアに対する耐性です。蚊が媒介する伝染病の一種で、人類史上、最強にして最悪の病気といわれています。
実際、治療薬が揃っている現在でも、熱帯地域を中心に、毎年2億人以上が感染し数十万人が死亡しているのです。
感染すると、マラリア原虫と呼ばれる微小な病原体が赤血球に寄生し、その栄養を奪って増殖します。数が増えると赤血球の膜を破って血中に散らばり、さらに別の赤血球に寄生して増殖を繰り返し、勢力を増していきます。赤血球を破壊されるため患者は貧血気味になり、次第に衰弱していきます。しかしそれが直接の死因というわけではありません。
マラリア原虫に寄生された赤血球は、周囲に正常な赤血球を集めやすくなります。顕微鏡で観察すると、複数の赤血球が花びら状に集まってみえるため、ロゼット(バラの花)形成と呼ばれています。ところがロゼットは、毛細血管を通過できず、詰まってしまうのです。そうなると末端組織への酸素と栄養の補給が阻害されるため、やがて多臓器不全を引き起こし、死に至ります。とくに脳、腎臓、肝臓、肺などがダメージを受けやすい臓器です。

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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。