夏に流行「アデノウイルス」大人が感染するとこんなに怖い

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 夏に気をつけたい病気といえばアデノウイルスによる感染症だ。風邪の原因ウイルスのひとつで感染場所によって風邪、重度のへんとう炎、肺炎、結膜炎など多くの感染症を引き起こす。大人が感染すると他の病気が重症化することもある。要注意だ。

 例年6月は一年で最も咽頭結膜熱の患者数が増加する。従来はプールの水を介して感染することが多かったため「プール熱」と呼ばれたが、いまは残留塩素濃度の基準を満たしたプールの水で感染することはほとんどない。感染力は強力でタオル、ドアノブ、階段の手すり、エレベーターのボタン等不特定多数の人が触る物品を介して感染が広がる。急な発熱、食欲不振、全身の倦怠感を伴い、咽頭炎、結膜炎などを起こす。「北品川藤クリニック」(東京・北品川)の石原藤樹院長が言う。

「アデノウイルスは50種類以上の型があり、咽頭結膜熱は主に3型の感染で発症します。39度前後の高熱に加え、のどの痛みや目の充血が3~5日間続きます。咳やくしゃみによる飛沫感染のほか手や皮膚からの接触感染でも広がることから、学校で感染した子供が家族にうつすケースが少なくありません」

 感染する力が発揮されるのは症状が出る2日前から。潜伏期間は5~7日で発症から1週間ほどで症状は軽くなる。学校保健安全法に指定されている病気のため、感染した子供は主要な症状が消失した2日後を経過するまで登校できない。

「平日の昼間は仕事のために家で子供の面倒をみられないという共働きのご家庭を中心に“市販の薬でなんとかならないか”と聞かれることがありますが、ウイルスは細菌と違って抗菌薬は効きません。特効薬はないのです。治療は対症療法が中心で自然と治るのを待つしかありません。薬を使っても数時間熱を下げるとか、腫れを引かせる程度です」(石原院長)

 大事なことは治そうとすることより、十分に栄養を取らせ、休息することと家族にうつさないことだ。タオルや食器などを共有しないこと、発症した子供の枕カバーなどの寝具は別にして洗ったり、お風呂のお湯は交換するなどの工夫が大切だ。

「のどが腫れて食べたり飲んだりするのを痛がる場合がありますが、水分は多めに取らせるようにしてください。乳幼児で胃腸炎の症状があり、吐き気があるようなら絶食にして、回復期に重湯やうすめた果汁を飲ませましょう。食べられるようなら、ゼリーなどのど越しの良い物を食べさせると良いでしょう」(石原院長)

■子宮頚部炎の報告も

 大人でも不摂生して抵抗力が弱っていればこの病気に感染して無菌性髄膜炎になってしまうことがある。

「発熱、頭痛、何度も嘔吐するといった症状がそろったら要注意です。首が硬くなり、あおむけで寝て首がまがらなくなる頚部硬直もみられます」(石原院長)

 咽頭結膜熱の疑いがある人に目やにが出たら直接手で触らせず、ティッシュなどでふき取り、必ずゴミ箱に捨て、手を洗っておくことだ。

 これからの季節は咽頭結膜熱と同じアデノウイルスだが別の型が引き起こす流行性角結膜炎にも注意が必要だ。清澤眼科医院(東京・南砂)の清澤源弘院長が言う。

「流行性角結膜炎の主な症状としては白目が充血して赤くなり、まぶたの裏側にブツブツができて目やにや涙が増え、かゆみ、しょぼしょぼ感、ゴロゴロ感、まぶしい感じなどが表れます。症状がひどくなると、出血、耳の前のリンパ腺の腫れ、まぶたの急激な腫れ、白目がブヨブヨする結膜浮腫、発熱などが起きます」

 結膜だけでなくしばしば角膜(黒目)にも炎症が広がり、角膜上皮(角膜の一番表層の細胞層)が傷ついて、淡い濁りができたりすることもある。

「特に小さい子供や赤ちゃんの場合は、急激に炎症が悪化しやすいので、注意が必要です」(清澤院長)

 症状のピークは1週間ぐらいで、その後徐々に治まってくる。しかし、炎症が強い場合は角膜の濁りが消えるまでに数カ月かかることも。

「診断は目の状態と迅速検査キットによって行います。子供は感染の恐れが消えるまで登校できない決まりになっています。大人でも出社できるか否かは職業等を考えての医師の判断となります」(清澤院長)

 このほかにアデノウイルスの3~5、7型が呼吸器に感染すると風邪と同じように咳や発熱、へんとう痛、咽頭痛などを起こす。とくに7型は重症な肺炎を起こすことが知られている。40、41型が胃腸に感染すると「ロタウイルス」に似た症状が出て腹痛や嘔吐・下痢となるほか、11、21型が膀胱に感染すると腹部痛や頻尿、血尿が出る。19、37型は性行為によって子宮頚部炎を起こすことも報告されている。

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