独白 愉快な“病人”たち

告知に泣いてしまい…小林アナさん乳がん手術決意と逡巡と

小林アナさん
小林アナさん(C)日刊ゲンダイ

「エッ! 全摘ですか?」 何が何だか頭の中がパニックになっているのに、「どうします?」と先生に聞かれて、思わず「わかりません」と言いながら泣いてしまいました。

 でも、おかげさまであれから無事に5年が経過しました。泣いて悩んだ割には、結論は貪欲で、何でもない左胸も豊胸手術をして全体に1・5カップ増し(笑い)。本当に手術をしてよかったと思っています。

「乳がん」がわかったきっかけは、自治体から送られてきた子宮頚がん検診の無料クーポンです。無料だから受けてみようと思い、ついでに3年ほど受けてなかった乳がん検診を受けました。実は母が40代で乳がん手術をしていたので、頭の隅には常にありましたが、当時はまだ31歳だったので特に気にしていませんでした。

 エコーと触診とマンモグラフィーの検査を受けた結果、唯一、マンモグラフィーの検査結果の中に「右乳房石灰化」と「再検査」の文字がありました。母の乳がん経験とネット情報などから「しこりがないなら大丈夫か」と思ったのですが、不安もあったので、すぐに病院に勤める叔母に病院を紹介してもらい、「念のためマンモトームを」と言われ、その検査を受けました。胸に部分麻酔をして5ミリほどメスを入れ、3~4ミリの針を刺して組織を吸引・採取する生体検査です。

「ちょっと大げさだな」と思いつつ、両胸の組織を取られ、「結果は1週間後」とのことでした。

 ところが結果を聞きにいく1日前になって、病院から「グレーなところでまだ結果が出ていない」と連絡があり、「エッ?」となりました。

「もう1週間待ってください」と言われ、やっと聞いた結果、「いろいろ調べましたが、がんでした」と告げられたのです。

 どうやらしこりになる前の初期の初期で、転移もほぼない非浸潤性とのことでした。

 ただ、右胸の石灰化が全体にあるため、一部を取ってもがんになる可能性があるといいます。で、医師から「もしボクの家族だったら右胸全体の摘出を勧めます」と言われたのです。

「エッ! 全摘ですか?」となったのはこのときです。初期の初期でしこりもない、非浸潤性で転移もないのに全摘……。大ショックです。もちろん温存の選択肢もあると言われましたが、「一度に取って作り直した方がいいよ」との助言。そして「どうします?」という医師。何なら手術の日程までその場で決めたいような空気の中、心も頭もついていかずに泣いてしまったわけです。

■「あんなふうにキレイな胸になるなら」

 それから1カ月間ほどかけて乳がん手術で有名な医師を探し、4カ所ほど病院を巡りました。何とか温存したいという思いだったのですが、どこへ行っても温存より全摘を勧められました。

 結局、その中のひとつ「ナグモクリニック」で手術をしました。そう、あの美容整形で有名なナグモクリニックです。その理由は、じかに体験者の胸を見て触らせてもらったことです。私が病院に行ったとき、ちょうどそこで乳がん患者の会があり医師の勧めで参加しました。みなさん明るくて、とてもキレイな胸になっていました。私は何十年も前の母の手術痕しか知らなかったので、その違いにビックリ。即「ここにしよう」と思いました(笑い)。「あんなふうにキレイな胸になるなら」と、右乳房全摘同時再建術を決意。ついでに左胸を豊胸しちゃったわけです。

 手術の日は、左右それぞれに何㏄入れるかを決め、さっそく手術。2~3時間かかったようですが、体感では5分くらいでした。同時再建術の良さは、目覚めたときにはもう胸があること。何もない状態を見ないで済んだのは、本当によかったと思います。クリニックなので入院はできず、翌日には傷口が痛いまま帰宅です。ベッドから起き上がるのも一人ではできないので、当時お付き合いしていた彼に随分お世話になりました。

 おかげさまで術後のがん治療は一切ありません。もちろん、検診にはこれからも年に1回は行きますけどね。

 病気の効用は、メンタルが強くなったこと。それまではネタで滑るとものすごく落ち込んでいました。

 でも、「滑っても死ぬわけじゃない」と思えて、いろんなことが怖くなくなったというか……。まぁ、それはそれで問題ですけど(笑い)、思い切れるようになりましたね。

 いつだったか、鏡を見たら左右の胸が以前より離れている気がして、検診の際に先生にその旨を伝えました。でも、手術前の写真と見比べたら、むしろ少し寄っていて大恥かいちゃいました(笑い)。

▽1981年、長野県生まれ。2004年、「新潟テレビ21」に入社してアナウンサーとして活躍。07年に退社、お笑い芸人に転身した。現在、FM NACK5「小林アナのあげあげマンデー」、FMヨコハマ「RADIOSHOPPING」(水・木曜レギュラー)などラジオパーソナリティーとしても活躍中。

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