一方、米国も全体的には高齢化が進んでいるとはいえ人口が多く、いまだに子供がたくさん生まれています。それだけ患者の数が多いので、思う存分、腕を振るってみたいという若手にとってはやりがいがあります。さらに米国では、自分が「これはいい」と思った医療機器を早い段階から使えるケースがほとんどです。日本では新たな医療機器が厚労省に承認され、実際に臨床現場で使用できるようになるまで何年もかかるケースは珍しくありません。
米国でもFDA(食品医薬品局)の承認が必要ですが、日本に比べるとはるかに早く認められて“デバイスラグ”がほとんどありません。最先端の機器を駆使した医療を早い段階で経験して実績を上げたいと考える若手医師にとっては大きな魅力といえます。
日本の心臓外科の“体質”も、若手医師のモチベーションを下げる一因になっていると考えられます。どの世界でもそうでしょうが、一定以上の実力があり、社会の中での位置付けがしっかりしていて、さらに人望などが重なって、初めて周囲から信用されるものです。しかし、今の日本の心臓外科の環境は、「あいつはこんなことをやっているから、われわれの仲間には入れない」といった“村社会”のような体質がはびこっているのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」