専門家に学ぶ 喘息コントロール術

気管支サーモプラスティで難治性喘息のコントロールが可能に

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今回の「喘息予防・管理ガイドライン2018」の治療指針にも組み込まれた「気管支サーモプラスティ」。以前、在籍していた国立国際医療研究センターは、2015年から気管支サーモプラスティを導入し、国内で最も多い症例に実施しています。

 気管支サーモプラスティは、全国100カ所以上の病院で行われています。対象は、前回で紹介した生物学的製剤と同様に、薬を適切に用いても喘息発作を抑えられない難治性喘息。18歳以上が対象で、現在、健康保険適用になっています。

 喘息は、慢性的な気道の炎症で気管支の壁の気管支平滑筋が収縮し、気管支の狭窄が引き起こされる病気です。気管支サーモプラスティでは、65度の高周波電流を10秒間流して気管支平滑筋を加熱。狭窄が起こらないようにし、喘息発作をコントロールするのです。

 使う治療器具は気管支鏡で、静脈または全身麻酔で口から挿入し、治療を進めます。肺は左右にあり、それぞれ右は上葉、中葉、下葉、左は上葉と下葉に分かれます。気管支サーモプラスティで加熱するのは、左右の上葉と下葉の気管支平滑筋です。一度に行うのではなく、数週間以上間隔をあけ3回に分けて治療を行います。

 治療後一時的に悪化する患者さんもいるため、入院による治療期間は1週間ほどです。この治療で効果が得られる患者さんは7割ほどです。実際に治療し経過を観察しないと、効くか効かないかはわかりません。1回の治療は40万円ほどで、このうち1~3割負担になります。

 ただ、何度もこの連載で伝えているように、従来の薬でコントロールできない難治性喘息は多くはありません。難治性だと思っていても、専門医のもと、適切な診断で、その人に合った治療法を行えば、見違えるほど症状をコントロールできるようになる人も実際にいるのです。

 =おわり

(NTT東日本関東病院呼吸器センター・放生雅章センター長)

関連記事