Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

相次ぐがんのリスク調査 日本人は糖尿病と痩せ過ぎが危険

北斗晶さんは乳がんを克服(C)日刊ゲンダイ

 そこで、注意したいのは糖尿病と痩せ過ぎのリスクです。世界的には、がんへの影響度は肥満が糖尿病の約2倍ですが、日本を含むアジア地域の解析では、男女とも逆転します。糖尿病が肥満を上回るのです。

 糖尿病の人とその予備群はそれぞれ約1000万人に上ります。そういう人は、血糖値を下げるインスリンが分泌されにくかったり、インスリンが効きにくかったりする「インスリン抵抗性」が背景にあるのです。

 インスリンはがん細胞の増殖を促す作用があって、インスリン抵抗性で血中にインスリンがたくさんある状態が続くと、がんのリスクが高くなると考えられます。ですから、糖尿病の人は高インスリン血症の有無を確認しておくことです。

 もうひとつ、痩せについては、「肥満度19未満」の痩せ過ぎが、男女ともがん死亡リスクが最も高く、男性の場合、「23以上25未満」に比べて約2倍です。最もよかったのが「25以上27未満」の小太りでした。

 小太りまでよしなら、気が楽でしょうが、糖尿病の治療は忘れずに。糖尿病が疑われる人でも、そのうち4割は治療を受けていませんから。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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