膵がん5年生存率80%以上を可能にする「4つのポイント」

新たに膵がんと診断される男性は年間10万人当たり29.1人
新たに膵がんと診断される男性は年間10万人当たり29.1人(C)日刊ゲンダイ

 膵がんは予後の悪いがんとして知られる。しかし、いくつかのポイントを知ることで、生存率を上げられるかもしれない。

「1センチ以下の膵がんの5年生存率は80.4%。この段階で見つけられれば、長期予後が期待できます」

 こう言うのは、飯田市立病院消化器内科・岡庭信司部長だ。2センチ以下で転移がないⅠA期の場合、5年生存率は54.1%。これより小さいがんを見つけるのは至難の業だが、決して不可能なわけではない。ポイントは次の通りだ。

(1)家族歴

「親、兄弟姉妹、子に、2人以上の膵がんがいると発症率は約7倍。この中に50歳未満の発症者がいれば、発症率は9倍に上がります」

(2)糖尿病

 発症率は2倍。

「初発時と、節制しているのに糖尿病のコントロールが悪くなった時は、膵がんを疑って検査を受けるべきです」

(3)膵管内乳頭粘液性腫瘍 膵臓には嚢胞性腫瘍という病気があり、その代表がこれ。自覚症状はほぼないが、膵炎を発症し腹痛や背部痛などで発見されることも。超音波検査やCTで偶然発見されるケースも増えている。これがあると、年間に1・1~2・5%の発生率で膵がんを発症することが分かっている。

(4)急性膵炎

 長期予後を実現させるには、転移を来す前に膵がんを発見するしかない。膵がんは増殖し、転移能を獲得するまでに約7年かかる。

「転移前に診断できる時期が少なくとも2~3年はあります」

 尾道総合病院(広島)の花田敬士医師が、膵がんの早期診断を目指す診断の流れとして考案した「尾道プロジェクト」で明らかになったのは、早期発見につながる病歴や画像所見だ。

「上皮内がん(長期予後が望める膵がん)が発見された患者には、『急性膵炎などの病歴』『画像所見として、分枝拡張、あるいは5ミリ以上の嚢胞、あるいは3ミリ以上の膵管拡張』という特徴が見られました」

 MR胆管膵管撮影では、「限局性の膵管の狭窄」、超音波内視鏡(EUS)では「随伴性膵炎を反映する淡い低エコー領域」が認められた。

■対策■

 ①~④に該当しても、全ての人が膵がんになるわけではない。しかし、自分が膵がんのリスクが高いタイプかどうかを知ることは重要だ。ガイドラインではこれらの危険因子を複数有する人に対して検査を行うことも提案されている。

 放置されがちなのが、腹痛。これらの消化器症状があったら、内視鏡検査だけではなく超音波検査を受ける。糖尿病があり、急激なコントロール不良が見られれば、その理由を探る。急性膵炎などは、治癒後も慎重に経過観察を受ける。

「現在、超音波では分枝拡張、5ミリ以上の嚢胞、3ミリ以上の膵管拡張は膵がんの高危険群として拾い上げるようになっています。今後は10ミリ以下の腫瘤像、膵管狭窄とその周囲の淡い低エコー領域もスクリーニングの対象にしていくべきです」

 超音波の精度は向上しており、高周波プローブでの拡大観察が可能な超音波観測装置であれば、膵臓をこれまで以上に詳細に観察できる。

 ただし、高周波の超音波を置いている検診医療機関はまだ多くない。疑わしいと思ったら、肝胆膵を専門とする診療科のある医療機関を受診することを勧める。超音波検査の認定技師がいるとより理想的だ。これらによって、1センチ以下の早期がんを発見できる可能性が高くなる。

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