独白 愉快な“病人”たち

モデルで食の研究家・室谷真由美さん 腎盂腎炎からの教訓

室谷真由美さん
室谷真由美さん(C)日刊ゲンダイ

 曲がりなりにも「ビューティーフード」と銘打って不調を招かないような食事を広めている講師なので、「食生活による自然治癒力で体を守ろう」という思いが強くありました。でも、それが強過ぎたなと反省しています。

「腎盂腎炎」になったのは、2015年の秋でした。その日は自ら主催したビューティーフードハロウィーンパーティーで、ホスト役として会を切り盛りしていました。当時は仕事が忙しくてイベントが続き、疲れは感じていました。普段は食いしん坊なのに1週間ぐらい前から食欲がなく、「おかしいな」と感じていたことも確かです。当日は腰回りに痛みがあり、熱っぽく、階段を上ると動悸や息切れもありました。でも、「貧血かな」くらいに考えていたのです。

 異変はお客さまがみなさんお帰りになった直後に起こりました。急に悪寒に襲われ、ガタガタと震え始めたんです。尋常ではない寒けで、立っていることもままならない状態だったので、スタッフにタクシーを呼んでもらって帰宅することに……。すでに夜10時を過ぎていました。

 ただ、あまりに震えがすごいので、帰宅の途中で「病院の方がいいかもしれない」と思い直し、そのまま自宅近くの病院へ向かったんです。

 タクシーを降り、受付まで歩くのも必死です。体のガタガタは止まらないし、息も苦しい。顔色だって普通じゃなかったと思います。でも、受付では何事もないかのように「これ、書いてくださいね」と書類を渡されました。正直、「え? こんな状態なのに?」と思いましたが、仕方がないので一通りのことを震えながらなんとか書いて提出したのです。

 さらに、そのまましばらく待っていると、「今日は人が多くて診られません」と言われました。しかも、「他の病院を教えてくれませんか?」と尋ねても、「自分で探してください」とバッサリ……。一気に力が落ちました。

「とにかく温かいものにくるまって眠りたい」と自宅に戻り、「明日こそ病院へ」と思って眠りにつきました。

 でも、翌日は立ち上がる力が出ず、病院へ行けたのは翌々日です。そこで、医師から「腎盂腎炎です。即入院してください」と告げられました。

■ひとりで抱え込み過ぎていた

 腎盂腎炎は、尿がたまる腎盂というところで細菌が繁殖して炎症する細菌感染症です。菌が全身に回ると命にも関わります。私の症状は危険なレベルに達していたようです。トイレをガマンしたり、水分摂取が少なかったりすると急性膀胱炎になりやすく、それがもとで腎盂腎炎になることが多いそうです。

 実はそれまでに尿意を覚える回数が増えたり、排尿時に痛むことが何度かありました。でも、水分を多めに取るなどすれば自然に治っていたので、あまり気にしていなかったんです。今思えば「膀胱炎」の症状ですよね。

「即入院」と言われましたが、治療は抗生物質の点滴だけだったので通院にしました。自宅から病院は運転手さんが嫌がるくらい近いんですけど、2~3日タクシーで往復しました(笑い)。

 朝は熱が37度ぐらいですが、夕方から上がりだして夜は40度になるパターンの繰り返しでした。通院3日目に夫と一緒に徒歩でトライしてみたのですが、ほんの10メートルほどで100メートルを全力疾走したような過呼吸状態になりギブアップ。結局、夫におんぶされて病院へ行きました。

 でも、その日の夜に少しだけおかゆが食べられるようになると一気に快方に向かい、間もなく仕事復帰できました。

「腎臓がダメージを受けるとこんなに大変なのか」と、改めて腎臓の大切さを思い知ったのと同時に、ギリギリまで頑張り過ぎてはいけないことを学びました。一番困ったのは仕事です。急きょ代役を立てたり、予定を変更してもらったり、激しい痛みの中でできる限りのことはしましたが、ひとりで抱え込み過ぎていたことを反省しました。

 女性は体の構造上、男性より細菌が膀胱内に入りやすいそうです。膀胱炎を放置すると腎盂腎炎になりやすいので、特に女性のみなさんに注意喚起したくて、治療中からブログで病気を公表しました。すると、「私もです」という声が想像以上に多くあって、本当に誰でもなり得る病気なんだと知りました。

 今はトイレをガマンしたり、仕事を詰め込み過ぎないように心がけています。デリケートゾーン専門のケア用品があることも知りました。お顔のお手入れと同じようにデリケートゾーンにも気を使うべきだと思い、実践しています。

 私はどちらかというと東洋医学の考えを基準にしているので、西洋医学の必要性は頭ではわかっていても、病院や化学的な薬にはあまり頼りたくない主義でした。

 でも、今回のことで西洋医学も時には必要だと身をもって経験しました(笑い)。

▽むろや・まゆみ 1973年、福井県生まれ。26歳でモデルとしてデビューし、雑誌やCMで活躍。タレント・女優としてテレビ出演も果たす。「マクロビオティック」の理論や食事法に出合って実践・研究を重ね、自ら「生命力を引き出す食」を広めたいと、36歳でビューティーフード協会を立ち上げた。現在、モデル業とともに講師として全国を飛び回っている。

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