天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

海外留学は若手外科医にとって大きなプラス

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■日本に戻ってくるように問題点を見直す必要がある

 こうした日本の現状を見ると、若手にとって海外留学はやはり大きなプラスといえます。当院でもいま、“武者修行”という形で若手の心臓外科医をインドに派遣しています。欧米では、外科医はあくまでもシステムの中の一員として自分の役割だけをこなす場合がほとんどですが、インドではそうはいきません。まだ医療後進国なので周囲に頼れる範囲が小さく、自分自身が頑張らないといけないのです。しかし、1施設当たりの手術数が年間5000例以上と莫大で、その分だけ症例を経験できますし、努力次第で自分の“陣地”を広げることができます。1年もすれば、アッという間に実力がつくのは間違いありません。

 また、こうした海外への武者修行は若手の上司にあたるベテラン医師の度量も試されます。ベテラン医師にとっては、若手を手元に置いたままずっと自分の言うことを聞かせておくほうが都合がよく、楽をすることができます。人員が1人減るというのは、かなり負担が大きいのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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