天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

海外留学は若手外科医にとって大きなプラス

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 問題なのは医師の数よりも地域偏在です。若手医師の多くは「都市部の大きな病院の方が症例数が多いから経験を積める。最先端の医療を習得できる」と考えるため、都市部に医師が集中しています。しかし、都市部での患者数は限られているため、外科医のスキルを上げるための患者数は必ずしも確保されていないのが現状です。

 外科医の数が少なく患者が多い地域にも設備を整えるなどして、若手にとっては都市部よりも経験も実績も積めるようになっていけば、モチベーションもアップします。活躍の場がいくつもあれば、海外で武者修行して日本に戻ってくる若手も増えていくでしょう。そうした外科医の社会的な評価をもっと高めていくような活動も必要です。

 また、ベテラン医師の側は、若手の“目標の質”を変えていく教育や改革も求められます。上司に従うだけでなく、どうやったら自分が上司を含めたまわりを凌駕して陣地を増やせるのかを考えさせ、それを受け入れる土壌をつくっていかなければなりません。

 どれも簡単なことではありませんが、日本での外科医の空洞化を防ぐためには、一つ一つ問題点を見直していくしかないのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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