Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

桂歌丸さんの命を奪ったCOPDは肺がん合併で治療が困難に

50年間携わった「笑点」メンバーに囲まれて(C)共同通信社

 COPDの重症度は1秒間にどれくらいの息を吐けるかで判定しますが、少なければ少ないほど悪く、重症なほど術後合併症のリスクは高まります。

 もう1つは、放射線肺臓炎です。肺がんのほか食道がんや乳がんなどで放射線治療を受けると、その影響で発症するのが放射線肺臓炎。COPDの人は、そのリスクも悪化しやすいのです。

 COPDを合併している肺がんの人は65歳以上で、進行がんが多いのが特徴です。それに加えて治療が難しいことから、無治療が少なからずあります。どちらも咳や痰が主な症状で、COPDに次いで肺がんを発症することから、COPDの人は肺がんを疑いにくく、診断が遅れやすいという事情もあるでしょう。

 2001年の大規模疫学調査で、COPDの患者数は530万人と推計されていますが、14年の厚労省患者調査でCOPDと診断されたのは26万人。未治療の人がかなりいることが見て取れるでしょう。潜在的なCOPD患者が知らず知らずのうちに肺がんになると、苦しい思いをせざるを得なくなることは容易に想像がつきます。

2 / 3 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事