気鋭の医師 注目の医療

肺移植手術は末期呼吸不全から生還可能な唯一の治療法

吉野一郎教授(提供写真)

「1例は病気の進行が予想以上に速い特殊なケースで退院できずに亡くなりましたが、あとの4例の術後経過は極めて順調です。酸素吸入を必要とした患者さんがスポーツができるようになったり、入院で寝たきりだった患者さんが社会復帰しています。すべての適合がうまくいけば、末期呼吸不全からよみがえることができる唯一の治療法なのです」

 しかし、脳死ドナーの臓器提供の連絡は、予想もできず突然やってくる。移植のチームワークのレベルを常に一定に保っておかなくてはいけない。そのため同院が全国の施設に先駆けて始めたのが、「クリニカルアナトミーラボ」というシステムによる肺移植トレーニングだ。簡単にいえば、篤志献体組織から提供された“ご遺体”を使った移植手術のシミュレーション。最低年2回は行っているという。

 もうひとつ注目されているのは、マウスを用いた肺移植や肺再生の基礎研究を行っていること。現在、慢性拒絶反応に対する決定的な治療法が見つかっていない。それは人の臨床に応用可能な動物の実験モデルがなかったからだ。その最先端の研究を並行して取り組んでいる。

▽1987年九州大学医学部卒後、同大大学院修了。米国ハーバード大学留学、国立病院九州がんセンターなどを経て、2007年から現職。16年4月から副院長兼務。〈所属学会〉日本肺癌学会、日本呼吸器外科学会、日本移植学会など。

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