梅毒が若い女性に急増中 症状から治療法まで知るべきこと

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 梅毒の感染者が爆発的に増えている。昨年は年間5000例を超えた。日本性感染症学会副理事長で東京慈恵会医大皮膚科教授の石地尚興医師に聞いた。

 長く年間1000例を下回っていた梅毒が徐々に増加し始めたのは、2010年。当初は男性が主な感染者だったが、13年以降、10~20代の女性の感染者の増加が目立ってきた。

 また、都心部だけでなく、地方都市にも感染が広がっている。

「MSM(男性間性交渉者)といった特定のコミュニティー、風俗営業など特定の感染源から、一般社会の男女間の感染に広がってきている。特定の性的パートナーしかいなくても、その性的パートナーが別の人との性行為で感染し、うつされることもあります。性行為をしている人は、だれでも可能性があると考えた方がいい」

“自分は大丈夫”と思わず、梅毒の知識をしっかり身に付けるべきだ。

■感染経路   

 母子感染もあるが、圧倒的に多いのは、性行為で梅毒の菌に感染している粘膜や皮膚に接触して、感染するケース。

「最初から最後までコンドームを装着していれば、感染のリスクを減らせます。しかし“射精時だけ”では駄目です」

 オーラルセックス、アナルセックスでも感染する。梅毒の菌の感染力は強く、1回の性行為でも感染する率は高い。要は、梅毒の感染者と1回でも性行為をしたら感染を疑うべき、ということだ。

■症状

「感染して3~4週間後に、性器や唇、肛門など感染部位に“しこり”や“ただれ”が出ます。痛くもかゆくもありません。症状は3週間ほどで消え、3~4カ月後、お腹や全身の皮膚に、バラ疹と呼ばれるピンク色の細かい発疹が出ます。やはり痛くもかゆくもなく、数週間で消えます。性器にじくじくと隆起した扁平コンジローマができることもあります」

 症状が消えるのは、体に備わった免疫力で菌が減少するから。しかし、免疫力だけで菌を排除することはできない。治療をしなければ、数年後には皮膚や筋肉に腫瘍が発生したり、感染後10年ほどで大動脈瘤や大動脈炎といった心血管病変、進行麻痺などの神経病変を起こす。

■検査

 感染後1カ月くらいから、血液検査で分かる。

「梅毒を疑う症状は出ているのに、検査時期が早いと結果が陰性になることがあります。時間をおいて検査をすれば陽性になると考えられますが、その間に感染を拡大させてしまうかもしれない。感染機会があって、疑わしい症状があれば、検査結果にかかわらず、治療開始が望ましいです」

 症状が、非常に軽くしか出ない人がいる。梅毒が珍しい時代が続いたため“実物”を見たことがないという皮膚科医もいるので、「ウイルス感染に伴う発疹」「風邪薬などの副作用」といった診断になることもある。

「医師が梅毒を念頭に置いて、患者に質問をすることが大事。手のひらや足の裏の発疹は梅毒の特徴的な症状なので、疑わしい人にはそれらを確認するとともに、“覚え”がないかを聞きます。性器などの発疹を調べることもあります」

 ただし、前述のように「身に覚えがなくうつされた」ケースもある。原因不明のしこりやただれ、発疹があれば、梅毒の血液検査を一度受けた方がいい。

■治療

 ペニシリンが効く。海外では筋肉注射1回で治療終了。日本ではかつてショック死の副作用が見られたため、飲み薬のみ。1日3回、2~12週間服用する。腫瘍や大動脈瘤などまでいくと治療困難になるが、発疹までであれば完治する。

「感染予防としては、不特定多数の人との性行為をしない。コンドームを適切に使用する。感染拡大予防としては、早期発見・治療が重要です」

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