患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

低血糖で意識喪失 予想もしていなかった事態が起こった

平山瑞穂氏
平山瑞穂氏(C)日刊ゲンダイ

 僕はひとりで昼食の準備をしている最中、突如、床の上に昏倒して、推定5時間後に目覚めた経験がある。注射したインスリンが効きすぎて低血糖に至り、意識を喪失したのだった。

 低血糖は、糖尿病治療において注意すべきポイントのひとつだ。めまいや動悸などの兆候があるので対処できているつもりだったが、長年の間に体が慣れてしまい、危険を事前に察知できなくなっていたのだ。小説「シュガーな俺」を、2006年に執筆した時には予想もしていなかった。

 低血糖の恐怖については、後にあらためて取り上げる。ここでは、「糖尿病とは何か」に触れておきたい。

 食べたものをエネルギーに変えるのがインスリンで、そのインスリンを分泌するのが膵臓。糖尿病とは、その膵臓がまともに働かなくなってしまっている状態を指す。

 糖尿病には1型と2型の違いがあり、大半の患者は2型に分類されている。いわゆる生活習慣病としての、膵臓が弱っている状態だ。2型は食事療法や運動療法で症状の改善が見込める一方、1型の場合、自力ではインスリンをほとんど分泌できないので、外からの投与に恒常的に依存するようになる。インスリン注射だ。

 僕は当初2型と診断され、2型患者としての治療を受けたが、1年ほどしてから診断が1型と改められた。糖尿病の型が途中で変わることはあり得ず、実はもともと1型だったのだが、僕の場合、発症からしばらくは2型と区別のつかない症状を呈する「緩徐進行1型」だったのだ。つまり僕には、いうなれば1型患者と2型患者、両方の経験がある。

 当然、「2型期」には食事療法に励み、一時的には症状の大幅な改善が見られた。現在は、血糖コントロールをほぼ全面的にインスリン注射のみに頼っている状態だが、食べたいものを、食べたいように食べられない2型患者の気持ちも、十分に理解している。次回では、お酒との付き合い方を具体的に紹介しよう。

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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