正社員で働く発達障害の人々

「私は発達障害でも働けるロールモデルになりたい」

福田晃平さん
福田晃平さん(提供写真)

 29歳の時に発達障害との診断を受け、障害を明かす形で、発達障害の子供への教育支援を行うLITALICOジュニアに指導員として就職した福田晃平さん(現在32歳)。現在の職場で2年半が過ぎ、いまでは教室に通ってくる児童にも慕われている、頼りがいのある指導員だ。以前は休日の楽しみといえば、時々、サーフィンに出かけることだったが、いまは家族で過ごす日も多い。

 ひとくちに発達障害といっても、自閉症スペクトラムや学習障害などさまざまな種類があるが、福田さんは集中してじっとしていることが苦手なADHDと診断されている。なかでも福田さんが苦手とするのは、複数の仕事を同時に進めたり、口頭で指示を受けることだ。それらの苦手分野がありながら仕事を円滑に進めるために、さまざまな工夫をしている。

「まず耳で聞くこと、特にいろいろな人が話している空間で指示を聞き取ることが苦手で、聞いたことを忘れやすい。その対策として、指示を受けるときは『パソコンでメモを取りながら聞いてもいいですか』と断って、指示内容をパソコンに入力しています」

■苦手なことは人に協力してもらう

 そのほか、ワーキングメモリーが浅く、自分がいま何をやるべきかという優先順位がよく分からなくなると話す福田さん。ワーキングメモリーとは、複数の情報を同時に頭の中で所持し、並行して処理する能力のこと。例えるならば、机の上に3種類の書類があっても処理していけるのが定型発達者(発達障害のない人)だとすれば、発達障害者には、書類が2種類以上あると混乱してしまう傾向がある人もいるという。その対策として、福田さんはウィンドウズに搭載されている「付箋」という機能を使い、いまやるべきことをパソコンのデスクトップに表示させておき、終わったものから消すようにして、やるべきことを忘れないようにしている。

「ほかにも書類のチェックが苦手で、ほかの人なら10分で済むところを30分かかってしまったりします。そういうときは、無理に自分で抱えないで、同僚の人に『半分やってもらってもいいですか』とお願いします。苦手なことはうまく人に頼むのも、仕事を続ける秘訣のひとつですね」

 大学時代はよく友達との約束を忘れたという福田さんは、予定の管理も得意ではない。しかし、いまの職場では、なるべく一日に多くの予定を入れないようにしたうえで、「今日は何時から○○君のお母さんがいらっしゃいますね」と、お互いに予定を声がけし合うようになっているので、助かっているという。

「私は、自分の特性を生かして、発達障害でも働けるというロールモデル(見本)になりたい。自分も発達障害だからこそ、発達障害の人が働きやすい環境をつくっていくことができると思うんです」

 障害をポジティブに捉えることで人生を前向きに転化させた福田さんの生き方は、まさに発達障害者のロールモデルだ。

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