Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

関ジャニ安田も克服 髄膜腫はガンマナイフで開頭せず治る

道上洋三アナは9月に復帰予定
道上洋三アナは9月に復帰予定(C)日刊ゲンダイ

 そんなにすぐ良くなるのか。そう思った人もいるでしょう。アイドルグループ「関ジャニ∞(エイト)」のメンバー・安田章大さん(33)が昨年2月、髄膜腫の摘出手術を受けていたことが明らかになりました。この病気は、脳腫瘍のひとつ。脳の病気というと怖そうですが、これは良性で治りやすいのです。

 一口に脳腫瘍といってもさまざまで、150種類に上ります。そのうち髄膜腫は、脳そのものにできるのではなく、頭蓋骨の内側を覆う硬膜から発生する良性腫瘍。ほかの臓器の良性腫瘍なら、切除せずに済むケースもありますが、脳腫瘍は良性でも脳を圧迫するため、摘出するのが第一なのです。

 症状は、それができる場所によって千差万別でも、大きくなるにつれて頭蓋内の圧が高まり、頭痛や吐き気が起こります。その周辺の脳機能障害によって聴力が低下したり、視野が悪くなったり、麻痺や痙攣が生じたり。言語障害が起こる人もいます。

 不安を募らせる症状ばかりですが、この病気が治りやすいポイントは脳の外側にできること。脳の内側にできる腫瘍とは決定的に違うのです。

 脳の内側にできる腫瘍に神経膠腫(グリオーマ)があります。悪性脳腫瘍のうち3分の1くらいを占めるタイプで、悪性たるゆえんはその広がり方にあるのです。乾いた布に水が染み込むように正常組織に浸潤します。腫瘍と正常組織の境界が分かりにくい上、近くに重要な神経や血管があることもあり、そもそも手術ができなかったり、十分取り切れないことが多いのです。

 ところが、髄膜腫は、境界がハッキリしていて手術で切除しやすい。治りやすいのは、そのためです。脳の外側にできるタイプには、ほかに下垂体腺腫や神経鞘腫などがありますが、いずれも同じように悪性度が低く、手術で切除しやすく、治りやすい。脳腫瘍は、脳の内側か外側かが大きなポイントです。

 安田さんの一件が発表される前、ABCラジオの道上洋三アナウンサーが、髄膜腫の治療で早めの夏休みを取ることを発表しています。道上アナは12年前にも同じ髄膜腫の治療で約3カ月休養していて、今回は再発した格好です。

「手術をして(髄膜腫を)取り除いたんですけど、あの時、わずかに残った4~5%の部分があった」

 自らの番組でそう説明されていますが、良性腫瘍でも再発する可能性はあります。たとえ再発しても、もう一度治療すれば大丈夫でしょう。

 道上さんは今回、放射線治療を受けるといいますから、恐らくガンマナイフと呼ばれる特殊な放射線と思われます。ガンマナイフは、約200本のガンマ線のビームを腫瘍に集中的に照射できるのが特徴。開頭することなく、高い治療効果が得られるのです。放射線治療が効果的なのも、腫瘍と正常組織の境界がハッキリしているため。頭蓋底など手術が難しい場所でも、ガンマナイフは有効です。10%は悪性の可能性がありますが、あきらめずに治療を受けることが大切でしょう。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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