がんとは何か

<10>がんになるための遺伝子と変異の順番は決まっている

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 ところが、この遺伝子が変異を起こすと増殖シグナルが送りっ放しになって細胞増殖が無限に続く。大腸・直腸がん患者の約40%でこの遺伝子の変異があるといわれる。

 一方、P53遺伝子はがん種を問わずがん患者の半数以上に変異が見られるがん抑制遺伝子だ。

 細胞核の中にあって「生命の設計図」と呼ばれるDNAに問題が起こると、「DNAの修復」「細胞分裂で行われる細胞周期の停止」「異常な細胞が必要とする血管新生の抑制」「壊れた細胞のアポトーシス(自死)」などの働きを行い、細胞ががん化するのを防ぐ。

 別名ゲートキーパー遺伝子とも呼ばれるP53遺伝子がつくるタンパク質は正常細胞にはほとんど見られない。ただし、変異したP53遺伝子がつくる異常タンパク質は細胞に蓄積する性質を持つ。

「正常なP53タンパク質は通常、MDM2と結合しています。この状態のP53タンパク質は分解されやすく、細胞内にはほとんどたまりません。ところが細胞がストレスを受けると、P53をリン酸化する酵素が働き、P53は活性化されます。このときP53タンパク質は形が変わり、MDM2と結合できず、P53タンパク質は分解されずに、細胞内に増えていくのです」

2 / 3 ページ

関連記事