大人も危険 スマホでのストレス解消が引き起こす目の病気

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子供を外で遊ばせたいが、今年の夏はとくに暑く、熱中症が心配だ。ついつい子供が室内でスマホのゲームに熱中しているのを認めている。そんな大人も多いのではないか。しかし、子供が近距離で液晶画面に集中し続けるのは危険だ。近視だけでなく外斜視を発症する可能性がある。

 モノを見たときに両目が同じ方向を向いていない状態を斜視という。片方は正面を向いているが、もう一方は意識しないと別の方向に向いてしまう。

「あいつどこ見ているんだ」

 幸子さん(仮名、42歳)は夫から指摘され、11歳になる息子の目の異変を確信した。うすうす気になっていたが、片方の黒目が外側を向いていた。息子を近所の眼科に連れて行ったところ「間欠性外斜視」と診断された。普段、両目の向きは正常だが、時折、右の目が外側にずれるという。医師から「生まれつき外斜視の傾向があった人の中には目が疲れると外斜視になる人がいます。息子さんはスマホや携帯用機器でゲームを長時間やっていませんか?」と尋ねられた。

「確かに、息子はテレビゲームが大好き。中学受験のため塾通いを始め、そのタイミングで連絡がつきやすいようにスマホを買いました。それで拍車がかかったようです。毎日、数時間スマホゲームでストレス解消していました」(幸子さん)

 小さい液晶画面を長時間見続けるのが良くないと言われた幸子さんは、スマホの代わりにタブレットを購入。ゲームも連続30分以内に決め、努めて遠くを見るよう息子と約束した。その後、子供が外斜視になることはなく、イライラした様子も見られなくなった。

■視力低下が進んで失明する危険も

 斜視は日本人の2~3%に見られ、時々、外斜視状態になる「間欠性外斜視」と常に外斜視状態の「恒常性外斜視」の2通りある。「日本神経眼科学会」理事で「清澤眼科医院」(東京・江東区)の清澤源弘院長が言う。

「眼球は『外直筋』など6本の筋肉で支えることで眼球を自由に動かせるのです。斜視でなければ両目の方向はほぼ同じですが、筋肉や神経、視力の異常などによって片方の眼球だけが別の方向を向くことがあるのです」

 斜視の中には「隠れ斜視」と呼ばれる「斜位」もある。斜位は普段、両眼視はできているものの、片目を覆い隠してもう片方の目に合わせる手がかりを奪うと、目の位置が上下左右にずれてしまう状態を言う。

「外斜視や外斜位の人は、両目を内側に寄せて見ることが苦手です。スマホを見る人の多くは20センチ以内に近づけて画面を見ます。それだけ強烈に目を内側に寄せるのですが、やがて片方の目が内側に目を寄せることに耐えられなくなる。視線が外側に遊んでしまうのです」(清澤院長)

 結果的に、片方の目だけで画面を追うことになり、眼精疲労の症状が表れる。不自然な姿勢を続けることによるストレスが重なりイライラしてくるという。

「人は左右の目で見ることで遠近感や立体感を感じている。斜視を放っておくと、両眼視が難しくなって遠近感が得られなくなる。そればかりか、片方の目ばかり使うため、使われない方の目の視力が衰えてきて、弱視になり視力が低下、失明することもあります」(清澤院長)

■大人でも発症する

 問題はこうしたスマホ斜視のリスクは、子供に限らず大人にもあることだ。

「斜視は目を動かす筋肉や神経が未発達な子供に多いのですが、大人も発症することがあります。斜位の人は意識すれば両目でモノを見ることができます。そのため、筋力が強いうちは問題が表れなくても、加齢で筋力が弱まると目の疲労がたまりやすくなり、筋力の弱い方の目が外側にずれてしまうのです」(清澤院長)

 中には単に目が外側にずれるだけでなく、モノが二重に見えると訴えることがあるという。

「麻痺性斜視と呼ばれるものです。目の動きに関係する動眼神経、外転神経、滑車神経のいずれかが麻痺を起こし、関連する筋肉の働きが妨げられると起こります。糖尿病などの生活習慣病が引き金となり発症する場合もあります。ただ、モノが二重に見える場合は、脳内の血管が詰まって眼球運動に関係する神経の麻痺を発症していることもあるので、早めに受診することが重要です」(清澤院長)

 斜視と判断されると、子供の場合は矯正用のプリズム眼鏡などを使用する。レンズにプリズムを組み込むことで目が外側に向いて見える見え方を変える特殊な眼鏡だ。それでも矯正が難しい場合は眼球を動かす筋肉を短くしたり、位置を変えたりする手術も検討される。

 斜視は子供の場合はいじめにもつながり、大人でも余計なハンディと感じることもある。早めに専門家に相談した方がいい。

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