がんと向き合い生きていく

お年寄りにも優しく簡便ながん検診の進歩に期待したい

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■犬や線虫を使った方法も

 先ほどの課長さんは、「ある町では犬でがん検診を行っていると聞きましたが、実際のところどうなのでしょうか」とおっしゃっていました。

 犬がにおいでがんを見つけるというもので、がん探知犬は、患者の息(呼気)、尿、便汁のにおいでがんの診断ができるといいます。確かに、犬の嗅覚は人間よりはるかに優れており、実際にがん検査に利用されているところもあるようです。

 しかし、がん探知犬の育成には多額の費用がかかったり、犬の集中力に左右されるため、1日で調べられる検体数が少ないといったハードルもあると聞きます。

 1ミリほどの大きさの線虫の嗅覚を利用したがん検査の研究も進んでいます。専門誌によると、線虫は好きなにおいの方に誘導され、嫌いなにおいには忌避行動を示すそうで、がんのにおいが好きだといいます。寒天プレートの片側にがん患者の尿などのにおいの検体を置き、中央に線虫を置くと、30分~1時間で検体の方に移動するというのです。これなら安価にたくさんの検体検査が可能な上、早期がんでも成功率が高いそうです。周囲の環境や生物そのもののコンディションの影響を受けやすいとされていますが、実用化のために、さらなる臨床研究が企画されているようです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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