子作り治療 最前線

検査で精子が見つからなくてもあきらめてはいけない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男性不妊外来の初診患者の約20%が「無精子症」とされている。精液検査で精子が一匹も見つからないのだ。しかし、そう簡単にあきらめてはダメ。2回、3回と精液検査を繰り返すことが大切になる。独協医科大学埼玉医療センター・リプロダクションセンターの岡田弘教授が言う。

「一般の精液検査では少量(0.005~0.01ミリリットル)の精液を計算盤にセットして、それを顕微鏡で観察して精子の数を数えています。そのため、たまたま精子がいなかっただけなのに無精子症と判定されてしまうことがあります。通常、精液は2ミリリットル以上あるので、この検査法ではたった400分の1~200分の1の精液を見ているのに過ぎないのです」

 精巣で精子がごくわずかしか作られていない場合、精液中に精子が出てきたり、出てこなかったりすることがある。その状態を「クリプトゾスペルミア」と呼ぶという。分かりやすく言えば「隠れ精子症」だ。

 本当に無精子症かどうか判定するには、さらに詳しく調べる検査をする必要がある。

「射精してもらった精液をすべて小分けにして、先細のプラスチック製の試験管に入れ、遠心分離機にかけます。そうすると精液中の細胞成分がすべて試験管の底にたまります。そのたまった沈渣(ちんさ)をすべて顕微鏡で調べるのです」

 少しでも精子がいれば顕微授精ができるので、一匹いるのとゼロとでは大違い。岡田教授らの外来では、他院で無精子症と診断されて来院する患者の約10%程度は隠れ精子症だという。

 では、無精子症と診断された場合には、どんな治療法があるのか。無精子症には「閉塞性」(全体の2割)と「非閉塞性」(同8割)の2種類がある。閉塞性無精子症は、精巣で精子は作られているが、精子の通り道(精路)が閉塞している病態。原因は精巣上体炎、ヘルニア手術、先天性、パイプカットなどだ。

「精路通過障害である閉塞性無精子症の治療では、手術によって精路をつなげる『精路再建術』を行います。閉塞の場所や原因によって『精管―精管吻合(ふんごう)術』、より高度な『精管―精巣上体管吻合術』と術式が異なります。ただし、精路再建術は顕微鏡下で行う難易度の高い手術なので、国内で実施できる医師は限られます」

 精路再建術が不可能な場合でも、まだ方法はある。「TESE(精巣精子採取術)」によって精巣から精子を採取して顕微授精を行うのだ。

 次回は、非閉塞性無精子症の最先端治療を紹介する。

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