世界的に増加傾向にある小児肥満は、日本ではむしろ少ないといわれています。この理由について、学校給食制度が挙げられていましたが、小児肥満の予防にどの程度寄与しているのか実証的な報告はありませんでした。そんな中、英国の公衆衛生学専門誌の電子版に「学校給食と中学生における肥満状況の関連」を検討した論文が2018年6月5日付で掲載されました。
この研究では、文科省が実施している「学校給食実施状況等調査」と「学校保健統計調査」のデータを用いて、2006~15年における県レベルでの給食実施率と、中学2年生から高校1年生の栄養状態指標が調査されています。栄養状態指標については、基準体重を20%以上超過している「過体重」、基準体重を30%以上超過している「肥満」、基準体重を20%以上下回る「やせ」の生徒の割合が算出され、給食実施率との関連性が検討されました。
解析の結果、県レベルの給食実施率が10%増加すると、翌年の過体重の男子の割合は0・37%、肥満の男子の割合は0・23%、統計学的にも有意に減少することが示されました。これは、給食実施率が10%増加すると、1年間において過体重の男子の約4%、肥満の男子の約5%が減少することを意味しています。
一方で、女子については過体重、肥満が減少する傾向が見られたものの、統計学的な差は示されませんでした。これは、日本の若年女性がそもそもやせ傾向にあることと関連している可能性があります。
学校給食は、食事バランスの偏りを防ぐことに有効であることが他の研究でも示されており、思春期の肥満を減らす有効な手法のひとつといえるかもしれません。
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