子供の腹痛を甘く見ない 親として知っておくべきことは?

1歳から使える日本初の治療薬PPIが発売
1歳から使える日本初の治療薬PPIが発売(C)日刊ゲンダイ

 1月、胃食道逆流症や胃・十二指腸潰瘍など“酸関連疾患”の治療薬、プロトンポンプ阻害薬(PPI/商品名ネキシウム)が、1歳以上の小児に日本で初めて承認された。小児の酸関連疾患について、信州大学医学部小児医学教室講師・中山佳子医師に話を聞いた。

 日本は、小児用の薬の開発が極めて遅れている。消化器系疾患についても例外ではない。

「小児・乳児の患者は、成人と比べて少ない。たとえば胃食道逆流症の有症状率は、成人11・6%に対し、10歳未満は3・2%。レセプトのデータベースで見ても、成人より小児・乳児の患者数は圧倒的に少ない。しかし数は少なくても、確実に治療を必要としている患者さんがいます」

 小児の場合、これまでは安全性や有効性に関する十分なデータがなく、また小児の用法が添付されていない状況で、臨床での必要性に迫られ、薬を使用せざるを得なかった。

 今回の承認は、新たな薬の承認の呼び水になるのではないかと、期待が寄せられている。

 一方で、小児科専門医の中で、消化器を専門に診る小児栄養消化器肝臓学会の認定医は非常に少ない。小児の内視鏡をできる専門医(内視鏡専門医)となると、全国に13人。早期診断・治療どころか、適切な診断に至っていないケースも多いだろう。親として何を知っておくべきか?

■胃食道逆流症

 胃酸を含む胃の内容物が食道内に逆流する。

「胸焼けや呑酸(酸っぱいものが口に上がってくる)が症状ですが、小児では嘔吐や腹痛が主症状。胸焼けがあっても、子供にはその概念がなく、訴えません。呼吸器症状や体重増加不良、胸痛、姿勢異常など消化管以外の多彩な症状が出ることもあります」

 親が注意深く観察するしかない。

 中山医師が診た子供は、親が育児日記に「嘔吐した時に苦しそうな顔をしていた」と書いてあり、後の胃食道逆流症の診断につながる情報のひとつになった。

■胃・十二指腸潰瘍

「小児では胃潰瘍よりも十二指腸潰瘍の頻度が高く、主症状は年齢で異なります。診断が遅れると成長障害や不登校を伴うことがありますし、穿孔、狭窄、消化管出血の合併症は、成人と同様、小児でも起こります」

 新生児から乳児期の主症状は、繰り返す嘔吐、消化管出血、体重増加不良。

 幼児期では、へそ周囲の腹痛。学童期では上腹部圧痛を伴う、みぞおちの痛みが多い。

「内視鏡が必要なケースもあります。夜間睡眠中に目が覚めるほどの腹痛があったり、早朝空腹時に腹痛がある場合。夜間睡眠中の嘔吐、貧血、消化管出血、成長障害、家族にヘリコバクター・ピロリ菌感染の人がいる場合は医師に相談を」

■治療

 胃食道逆流症では、典型的な症状があり、貧血、消化管出血など危険兆候がなければ、PPIを2週間投与する。

「有効であれば4~8週間治療継続します。無効・再燃例では内視鏡検査を薦めます」

 PPIでいったん治っても再燃する人は多い。「症状がある時だけ薬を飲む」「治療薬を継続して内服する」など、程度に応じて対処が変わる。なお、9週以上にわたる小児への長期投与に関する新たな臨床治験が現在取り組まれている。

 胃・十二指腸潰瘍は、診断に内視鏡が必要なケースもあれば、腹部エコー検査などでスクリーニングすることもある。

「潰瘍が確定すれば、PPIを投与。組織検査などでピロリ菌が認められれば、引き続きピロリ菌除菌治療を行います」

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