カラオケ療法

<7>歌うことは「のみ込む筋肉」を鍛えることにつながる

50歳過ぎには特にお勧め!?
50歳過ぎには特にお勧め!?(C)日刊ゲンダイ

「歌うこと」が健康寿命につながることは「はぎの耳鼻咽喉科」(東京・町田市)の萩野仁志院長も認めている。

 萩野院長は「『医師』と『声楽家』が解き明かす発声のメカニズム~いまの発声法であなたののどは大丈夫ですか~」の著者で、「あえいおう体操」の考案者。いわば声のお医者さんだ。

 萩野院長は発声しながら体操することで、体の内外の筋肉を効率良く鍛えられると言う。

「発声のためのトレーニングというと、歌手やナレーターなど声のプロだけが行う特別なものと思われがちですが、そうではありません。発声も喉を取り巻く筋肉の運動で行われています。使わなければ衰えます。50歳を過ぎると全身の筋肉同様に声帯の筋肉も徐々に減少します。特に定年退職した後に社交性のない男性は日常的に声を出すことが少なくなり、ハスキーボイスになる。それは男性の場合、女性よりも声帯が大きいため、やせるとその変化率が高くなるからです」

 そもそも声帯は発声するための器官で、喉の弾力のある左右一対の喉頭粘膜のひだから成る。声を出すときは両側から狭まり、肺からの強い呼気が下から押し上げることで声帯が振動する。

「声帯は声を出す以外に気管のふたの役割も果たしています。加齢で声帯がやせるということは、本来は食道を通るべき食べ物が誤って気管に侵入し、誤嚥する可能性が高まるということです」

 では、声帯をやせさせないためにはどうすればいいのか? 

 一番いいのは歌を歌うことだという。本来、声を出すために使う筋肉と、食べ物をのみ込む筋肉は同じものが多い。大声で歌うことは、知らず知らずのうちに食べ物をのみ込む力を鍛えることにつながるのだという。

「特に上手に歌おうとして自然と前かがみの姿勢に陥る人が多い。むしろ、かかとに体重を乗せて背筋を伸ばすだけで、肺活量や姿勢を維持するためのお腹回りの筋力が向上する。後者の姿勢で歌うと横隔膜をよく動かすことになり、胃腸を刺激してお腹がグーグー音を出して動きだすことがあります。胃腸にもいいようです」

 歌うことは若い人、子供にとっても大事なことだと萩野院長は言う。

「今の子供は学校健診でも口を大きく開けられず、大きな声も出せない。あごが小さいこともあるが、喉の筋肉が子供のころから弱っているのは、将来の誤嚥につながるのではないか、と心配です」

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