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死亡リスク低下の結果 アブラナ科の野菜を積極的に取れ?

キャベツもブロッコリーもアブラナ科
キャベツもブロッコリーもアブラナ科(C)日刊ゲンダイ

 キャベツやブロッコリーといったアブラナ科の植物には「イソチオシアネート」と呼ばれる抗酸化物質が含まれていて、動物実験などでは、がんの発症を予防する可能性が示唆されています。しかし、こうした野菜を積極的に摂取することで、人にどのような効果がもたらされるのかは不明でした。

 そんな中、欧州臨床栄養代謝学会誌の電子版に、「アブラナ科の野菜摂取と死亡リスクの関連」を検討した論文が2018年4月24日付で掲載されました。

 この研究では、がんや心筋梗塞、脳卒中を発症したことがない45~74歳の日本人8万8184例が解析の対象となっています。アブラナ科の野菜摂取量について、最も少ないグループから、最も多いグループまで5つの集団に分け、最も少ないグループを基準として、各グループにおける総死亡、心臓病による死亡、がん死亡などのリスクが検討されました。

 中央値で16・9年にわたる追跡調査の結果、アブラナ科の野菜摂取量が最も少なかったグループに比べ、最も多かったグループで総死亡のリスクが男性で14%、女性で11%、統計学的にも有意に低下しました。また、男性ではがんによる死亡リスクが、女性では心臓病や脳卒中による死亡リスクが、それぞれ統計学的にも有意に減少するという結果でした。

 アブラナ科の野菜を積極的に摂取している人は、他の食事内容についても健康を意識している可能性が高く、この研究結果のみでアブラナ科の野菜が健康に良いと結論することは難しいかもしれません。とはいえ、適量の摂取を否定するものでもありませんので、健康に関心のある方はこうした野菜を積極的に取り入れた食事をしてみるのもいいかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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