天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓が弱っている人は水分の取り過ぎに注意が必要

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 体内の水分が増えると血液量が増えるので、それを循環させる心臓の負担は大きくなります。また、増えた水分は肺に染み出してたまります。すると、血液に酸素を取り込みにくくなる肺うっ血となり、全身状態が悪化してしまうのです。

 先にも言ったように、水分は腎臓で処理されます。ですから、心臓の働きが弱っていることに加えて腎臓も悪い人は、余計に水分摂取に要注意です。場合によっては、水分の過剰摂取が命に関わる事態につながりかねません。このような方では足のすねの部分でむくみが起きやすくなります。午前中にむくみを自覚したら要注意です。

■自覚症状がなくても心臓疾患が隠れているケースが

 胸痛、息切れ、動悸など心臓に自覚症状がなくても、水分摂取に気を付けるべきケースもあります。糖尿病を抱えていたり、高血糖状態を放置している人は自覚がないまま心臓の働きがどんどん弱くなることも珍しくありません。そういう人が突然、心不全を発症して病院に運ばれ、実は何らかの心臓疾患にかかっていたという事例もあります。気付かないうちに心臓が衰えていて水分の過剰摂取が“引き金”になってしまわないようにするためにも、糖尿病や高血糖の人は検査を受けて心臓の状態をきちんと把握しておくことが大切です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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