カラオケ療法

<8>歌うことで筋肉が鍛えられ舌の位置が戻り呼吸力アップ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 口を閉じたときの舌先の位置は上の前歯の歯肉にある切歯乳頭に触れるのが正しい。ところが、舌の筋肉が弱い人はそれができない。あおむけに寝たときはとくに舌が重力に負けて喉の方に落ち込み、正常な呼吸を阻害する。これがいびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)につながる。SASになると認知症リスクが2倍になるといわれ、酸素が十分に眼内に届かないために、緑内障になりやすいとも報告されている。

「歌うことは弱った舌の筋肉を鍛えることにつながります。高い声を出そうとすると、自然と喉仏が上がります。喉仏を上げるために必要な筋肉はある程度はカラオケで鍛えられる。結果、口を開けたり、のみ込んだり、噛む力がついてきます」(八重洲歯科クリニック・木村陽介院長)

 歌は呼吸力のアップにも貢献する。文京学院大学保健医療技術学部理学療法学科の柿崎藤泰教授が言う。

「ヒトが息を吸うときは肋骨の下についている横隔膜を使います。これが下がると空気が肺に入ります。また、吐くときは腹直筋や腹斜筋、腹横筋などを使います。歌うことは横隔膜などの呼吸に関連した呼吸筋や肺を包む胸郭の働きを高める可能性があるのです」

 柿崎教授は昭和大学付属豊洲病院リハビリテーション部主任などを務めた呼吸器リハビリのプロ。患者の中には肺の手術後にカラオケ通いをして元気を取り戻した患者もいたという。

 老舗カラオケ機器メーカーの「第一興商」(東京・品川)は今年1~2月に「カラオケがストレスにどのような変化をもたらすか」について調査している。NTTコミュニケーションズの20歳以上の従業員の中から「4~5週間の間に週に1回以上、1回につき1時間以上カラオケ歌唱(最低5曲)を行った」113人をピックアップ。カラオケ前と後に実施した「ストレスアンケート」の結果を比較した。

 使用されたストレスアンケートは労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアルにより推奨されている「職業性ストレス簡易調査票=57問式」を含め3つ。結果は「気がはりつめている」が、カラオケ前の7.1%からカラオケ後は5.3%に下落。「不安だ」が、5.3%から3.5%に下落するなど、軒並みストレス度が低下したという。

 第一興商の戸塚圭介営業統括本部エルダー事業開発部長は「結果を見る限り、週に1回以上、1回に1時間以上のカラオケを4週間以上継続すれば、ストレスが改善されるということでしょう」という。

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