実録 父親がボケた

<15>介護疲労がたまりにたまり常識人の母が暴言を吐いて…

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 というのも、介護疲労がたまっていたからである。夜中に何度も起きてトイレに行く父を介助し、朝は尿で汚れた衣類と寝具とポータブルトイレを洗い、3度の食事を作り、風呂に入れて体を洗って着替えさせ、入所時に持ち込む生活用品を揃え、衣類に名札を縫い付け……。もし私だったら酒でも飲まないとやってられないと思う。

 母は悪くない。暴言には仰天したが、ストレスをためない「認知症との付き合い方」を心得ればいいだけの話。

 良書があったので、さりげなく母にすすめた。右馬埜節子著「認知症の人がスッと落ち着く言葉かけ」だ。母もこれを読んで、己の凶行を反省したようだ。

 父の16日間自宅ステイは、母に「在宅介護は無理」という諦観をもたらした。罪悪感を払拭し、覚悟を決めたように見えたのだが、これ、実は根がとても深い問題だったので、またの機会に書こう。

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吉田潮

吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

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