ゲノムが世界を変える

「染色体」「DNA」「遺伝子」「ゲノム」の意味を知る

ゲノム編集の国際会議がまとめた声明を発表するカリフォルニア工科大のデービッド・ボルティモア教授(C)共同通信社

 媒体であるDNAに書き込まれているのは、生物の体を作るタンパク質や、生命活動を支えるための酵素、ホルモン、分子センサーなどの設計図です。人間の場合、設計図の種類は約2万といわれています。そして個々の設計図(およびそれが書き込まれているDNAの領域)を「遺伝子(ジーン)」と呼んでいるのです。

 しかし、遺伝子として使われているのは、DNA全体のわずか5%ほどに過ぎません。また遺伝子の働きを調節するための情報が、全体の2~3%を占めていることが分かっています。しかし、残り90%以上は、どんな役割を担っているのか、そもそも何かの役割を担っているのかさえ、よく分かっていません。

 そして、それらよく分からないものまで含めた全ての遺伝情報を、ひとくくりに「ゲノム」と呼んでいるのです。つまりゲノム編集とは、DNA上の遺伝子やその他の情報を、自在に編集(追加・修正・削除)できる技術ということです。

 いかがでしょうか。これら専門用語の意味を理解できたあなたは、すでに素人の域を脱しています。会社の同僚や後輩たちに、ちょっと自慢してもいいでしょう。

 あすはいよいよ、ゲノム編集の仕組みに迫っていきます。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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