医療費削減のカギに ジェネリックの普及を阻む“しがらみ”

 国民医療費が急増する中、「協会けんぽ」(全国健康保険協会)は組合員が使用する薬の8割を後発医薬品(ジェネリック)に替えれば、医療費は500億円削減できるとする試算を発表した。協会けんぽは中小企業の従業員約3900万人が加盟する健康保険組合。

「2016年度の決算で、医療費の9兆円の出資のうち保険料と税金で賄った給付金は約5兆円。そのうちジェネリックの使用割合は65.9%でした(院内処方も含む)。政府目標の80%になれば500億円、100%では1133億円から1412億円の削減が見込まれます」(同企画グループ)

 現在、わが国の医療費は42兆3644億円(15年度)と、前年比で3.8%増加、10年前に比べると約30%も増加している。医療費の中で約8兆円が薬剤費。ジェネリック医薬品は、新薬の特許終了後に開発された新薬と同じ有効成分を含む医薬品で、価格は新薬の50~70%安い薬だ。

 厚労省は急増する医療費を抑制するため、15年6月の閣議で18年度から20年度末までの間のなるべく早い時期に、ジェネリックの普及率を80%以上にする数量シェア目標を決定した。

 日本ジェネリック製薬協会によれば、17年度のジェネリック医薬品の数量シェアは69.9%(前年65.5%)。大手企業の従業員1606万人が加入する健康保険組合では、18年1月時点で74.1%(調剤ベース)にまで普及。20年度までの政府目標値80%の達成に近づいている。医療費削減の政府のロードマップは順調に進んでいるように思えるが、医薬品業界の専門誌編集長が問題を投げかける。

「欧米諸国ではジェネリックの使用は90%を超えています。日本も世界標準に近づいたといえますが、問題は職種別の使用割合や患者により差があることです」

 これは協会けんぽの分析でも指摘されたことだ。

「医者や看護師ら医療業者の使用割合は6割程度。重い病気の患者や、医療費の高い患者に医者はブランド品を使う傾向が強いんです」(同編集長)

 医療費を削減する方向は官民とも徐々に浸透してきてはいるが、医療コンサルタントの吉川佳秀氏もこんな指摘をする。「若い医者は積極的にジェネリックを患者にすすめますが、年配の医者ほど使いません。医薬品メーカーとの付き合いや、MRの接待など、メーカー寄りの新薬を使うケースが多いんです」

 ジェネリックの使用は患者の自己負担の軽減に寄与する。まずは患者から医師へジェネリックを使う意思表示を広めたい。

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