子作り治療 最前線

早発閉経でも年齢相応の妊娠率へ 卵子を凍結保存する手も

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 通常、女性の閉経は50歳前後に起こるが、40歳未満で無月経になるのが「早発閉経」だ。原因は、染色体異常、自己免疫疾患、手術や放射線治療による医原性など多岐にわたり、卵子の源である卵巣内の原始卵胞が急激に減少してしまう。

 発症頻度は、30歳未満の1000人に1人、40歳未満の100人に1人とされ、晩婚化に伴い不妊症の原因になっている。治療はホルモン療法や排卵誘発などが行われているが、効果は限定的。最も有効な治療法は、他の若い女性から卵子を提供してもらい体外受精をすることだが、国内では普及していない。

 そんな難治の不妊症の最新療法として注目されているのが「卵胞活性化療法(IVA)」。開発者で国際医療福祉大学医学部産婦人科教授・高度生殖医療リサーチセンターの河村和弘センター長が言う。

「原始卵胞は胎児のときは600万個ほど存在しますが、成長とともに減っていき思春期には20万個程度になる。そして、月経のたびに数百個が活性化して発育します。しかし、原始卵胞が残り少なくなると自然に活性化が停止してしまう。IVAは、早期閉経の患者さんの卵巣にわずかに残っている卵胞を手術で体外に取り出し、人為的に活性化させて再び体内に戻すのです」

 手術は、腹腔鏡手術で行う。卵巣の一部または片側の卵巣を取り出し、原始卵胞が残っていることが確認できたら特殊な薬を使い48時間培養して活性化させる。その後、再び腹腔鏡手術で卵管の近くに活性化した原始卵胞を移植する。手術の効果は1~2年くらい続き、この間にホルモン療法と排卵誘発剤を用いて卵胞を育てる。成熟した卵胞が確認できたら、採卵して体外受精を行うのだ。

 この最新療法を用いて、2013年には世界で初めて早期閉経患者の妊娠、出産が日本で成功し、世界的な話題となった。原始卵胞が残っていれば、50~60%の確率で成熟した卵子がつくれるという。手術で摘出した卵巣の余った部分は、凍結保存しておけば再度治療に使うこともできる。

 ただし、妊娠率は患者の年齢相応のレベルを超えない。これまで実際に妊娠に至ったのは116例中12例、21例は今後、胚移植予定という。

「早期閉経は発症前に『生理不順』の前触れがあることが多い。疑いは『抗ミュラー管ホルモン』を測定(採血)すれば分かるので、心配な人は早めに検査を受けることを勧めます」

 疑いがあれば、事前に卵巣を凍結保存する対策も取れるという。

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