2カ月後の発症も…その「湿布かぶれ」は光線過敏症です

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 猛暑とはいえ、休日はゴルフやランニングなど好きなスポーツで体を動かしたい。そんな人もいるだろう。なかには張り切り過ぎて筋肉が張り、湿布薬のお世話になる人もいるはずだ。しかし、それが原因で皮膚がみみず腫れになったり、色素沈着を起こすなどして悩まされることがある。注意したい。

「私が診たなかで最もひどかったのはバスケットボールで足首を捻挫した中学生の女の子です。別の病院で湿布薬を処方され治療は終わっていたのですが、友達と川に遊びに行き、湿布薬を巻いていた方の足首がやけどのように水ぶくれになった状態でした。すぐに光線過敏症とわかり治療しましたが、治るのに1カ月以上かかりました」

 こう言うのは「みずい整形外科」(東京・目黒区)の水井睦院長だ。光線過敏症とは健康な人では問題を生じない太陽光が皮膚に当たると、赤みや炎症、かゆみを伴う発疹などの異常反応を起こす病気のこと。その原因は遺伝性、代謝異常、アレルギーなどさまざまだが、薬剤性のものもある。最近、とくに問題になっている薬剤性光線過敏症がケトプロフェンと呼ばれる成分を含む湿布薬だ。

「ケトプロフェン成分を含む湿布薬は整形外科では広く処方される消炎鎮痛薬です。しかし、その成分が肌に残った状態で紫外線を浴びると、赤いぶつぶつができたり、水ぶくれのような皮膚障害を起こすことがあるのです。そのため紫外線が強く肌の露出が多い春から夏にかけては他の湿布薬に替えて、極力出さないようにしているのですが、いまだにこうした副作用を知らずに使っている人は少なくありません」(水井院長)

 もちろんケトプロフェン入りの湿布が原因の光線過敏症は子供だけではない。大人でもなるし、その成分が入っていれば市販の湿布薬でも発症する場合もある。

 田中恭子さん(仮名、32歳)は7月初旬、行きつけの居酒屋のゴルフコンペに参加した。当日は、元気良くクラブを振った田中さんだったが、翌日両足のふくらはぎの筋肉がパンパンに。ドラッグストアで湿布薬を購入し、自分で処置したところ、1カ月後に今度は両ふくらはぎの皮膚が真っ赤に腫れあがった。「みずの皮フ科医院」(千葉・市川市)の水野優起院長が言う。

「田中さんが購入した湿布もケトプロフェン成分を含む湿布薬でした。薬の説明書にも『はがした後も4週間程度は貼っていた部分を日光に当てないように』と記載されていたのですが、田中さんはそれに気づかずに使用して(光線過敏症のひとつである)光接触皮膚炎を発症したのです」

■遮光しなければ再発する恐れも

 この成分が含まれる湿布薬が厄介なのは、湿布薬を貼っているときは何ともないのに、はがした後に紫外線を浴びると突然発症することだ。

「湿布をはがして1カ月以上経ってから発症することもザラで、2カ月すぎてから症状が出たケースもあります。患者さんは湿布したことを覚えていないケースも多く、“急に水ぶくれができた”と訴える患者さんが夏場には多く受診されます」(水野院長)

 湿布に含まれる有効成分は皮膚から吸収され、一部は皮膚の中にしばらく残る。そこに紫外線が当たると、薬剤がアレルギーの原因物質に変わり、それが皮膚に炎症を起こす。

 光接触皮膚炎を起こす可能性がある湿布薬はケトプロフェンが主成分の「モーラステープ」「モーラスパップ」「ミルタックスパップ」などの他に、ジクロフェナクナトリウムが主成分の「ボルタレンテープ」など。

「光接触皮膚炎の治療はステロイドの塗り薬が基本で、症状によっては抗アレルギー薬などの飲み薬を使う場合があります。症状がおさまった後も、2~3カ月は同部位に色素沈着をきたします。また、治った後も1カ月ほどは発症した部位を遮光しなければ再発する恐れがある。面倒な病気です」(水野院長)

 この時季、紫外線に当たらないように長袖・長ズボンで過ごし、包帯などで覆うなどして湿布が貼ってあったところを隠すのは一苦労だ。夏場、湿布薬を使うときは事前に医師や薬剤師に光線過敏症のリスクを尋ねておくことだ。

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