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再発率が低く傷も残らない子宮動脈塞栓術で子宮筋腫を治す

瀧康紀センター長
瀧康紀センター長(C)日刊ゲンダイ
瀧康紀センター長 調布恵仁会クリニック・UAEセンター(東京都)

 同院は、循環器内科、内科、子宮筋腫と下肢静脈瘤の治療を専門とする施設(府中恵仁会病院の関連施設)。特に、子宮筋腫に対する「子宮動脈塞栓術(UAE)」という治療法に定評がある。

 子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性腫瘍で、35歳以上の女性の3割、40歳以上の5割にみられるとされる。命に関わることはないが、10~20%の人が「月経過多(出血量が多い)」「貧血」「月経痛」「頻尿」「尿失禁」などの症状に悩まされている。

 UAEは、太ももの付け根の動脈にカテーテル(細い管)を挿入して行う血管内治療。1990年代後半から行われている治療法だが、日本では2014年に治療で用いる塞栓物質が認可され、保険適用で治療が受けられるようになった。

 瀧康紀センター長(顔写真)はUAEのエキスパート。20年間で行った症例数は約3400例に上り、いまでは年間300例のペースで行っている。UAEのメリットをこう言う。

「子宮筋腫を根治するには、子宮全摘しかありません。子宮を残す場合、一般的には子宮筋腫だけを切除する筋腫核出術を行います。しかし、子宮筋腫の7割は多発性なので再発しやすい。それに比べてUAEは個数に関係なく一度に治療できて、再発率は5年で10%です。また、切開部分は2~3ミリなので傷が残らず、早期に社会復帰できるのが特徴です」

 UAEは血管造影(X線透視)を用いて、外径1.3ミリのカテーテルを子宮動脈まで挿入する。そこで細かい粒子の塞栓物質を注入し、子宮筋腫に栄養を与えている血流を止めることで筋腫が縮小して症状が改善するという仕組みだ。

 消毒開始から止血終了までの手技時間は30~60分。そのうちの透視時間は平均10~15分だ。入院期間は前日入院で3泊4日。術後は翌日に歩行、48時間後に退院。デスクワークなら1週間後には職場復帰できるという。

■再発率は5年で10%

 UAEを行うと筋腫は徐々に縮小し、その効果は1年半くらい続く。

「術後、筋腫は半年で元の体積の50%、1年後には40%の大きさに縮小します。症状の方は、術後の翌月の月経では過多月経の出血量が減り、月経痛も薬を飲まなくてもよくなる人がほとんどです。子宮筋腫由来の症状は、約90%以上の患者さんが改善しています」

 ただし、UAEの対象にならない患者も3割ほどいるという。

 それは「筋腫が大き過ぎる」ケースだ。治療の縮小効果も限度があるので、適応になるのは筋腫による腹部の膨らみがヘソくらいまでの患者。それ以上だと、薬による対症療法で経過観察するか、全摘するしかない。子宮筋腫の症状は、閉経を迎えれば自然と改善していくという。

 また、妊娠を望む人も基本的には対象外になる。UAE後、妊娠にどう影響するのか医学的なエビデンスがはっきり分かっていないからだ。

「ただし、術後の癒着は筋腫核出術よりUAEの方が少ない。核出術では子宮へのダメージが大きいと考えられれば、UAEを検討する場合もあります。当院では33~35歳の患者さん3例で、UAE後に妊娠・出産しています」

 UAEを受ける患者の平均年齢は42.3歳。ほとんどが他院で「全摘しか治療法がない」と言われて来院するという。

▽1986年、日本医科大学卒。慶応義塾大学医学部放射線科助手、川崎市立井田病院放射線科医長、葉山ハートセンター放射線科部長・UAEセンター長を経て、府中恵仁会病院。2016年から現職(副院長兼務)。〈所属学会〉日本医学放射線学会、日本IVR学会、日本産婦人科学会など。

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