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トップシェフが料理本も “コオロギパウダー”が米で人気に

コオロギ(右)とすりつぶした粉
コオロギ(右)とすりつぶした粉(C)(ロイター=共同)

 先日、「プラント・ベースト・フード」がトレンドになり、ベジタリアンでなくても植物性中心の食生活に切り替える人が増えていることを紹介しました。さらに、健康や環境にコンシャスなアメリカの若者が興味を抱いている、でもまったく違う食べ物が昆虫です。

 世界的な食糧不足の解決策として、国連では「昆虫食」を推奨していますが、アメリカではクリケット(コオロギ)、それもひいて小麦粉のような粉状になった「クリケット・フラワー」が注目されています。

 クリケット・ファームは昨年の時点で全米に6カ所あります。場所も取らず、水もエサも排出するメタンも劇的に少ないことで、これからも参入する企業の増加が期待されています。ただし、製品としてこれまで市場に出回っているのはせいぜいエナジー・バーが何種類かでした。それがここにきて新しい動きが出始めているのです。

 たとえば、「シーク」という会社は元ラルフ・ローレンの重役が立ち上げたスタートアップで、普通の小麦粉の代わりに使えるクリケット・フラワーを製造。ニューヨークのトップシェフを巻き込み、クリケット料理本の出版を準備中です。クリケットの粉でケーキを焼くと、プロテインが4割増しとのこと。

 健康へのメリットを臨床実験したのが、ウィスコンシン大学の研究チームです。18歳から48歳までの20人の被験者にクリケット・パウダー入りのマフィンを朝食として食べさせたところ、食べていない時に比べてお腹の健康に密接に関係し、メタボリズムを上げる代謝酵素が増加。ビフィズス菌など腸内の善玉菌が増えることもわかりました。「クリケット・パウダーの何が貢献しているのかは、今後の研究に期待したい」と研究者は語っています。

 ちなみに筆者は先日、クリケット・パウダーで作ったパスタを初めて食べましたが、全粒粉のパスタと似たような味と食感で、これなら悪くないなと思いました。普通にコオロギを食べる時代はすぐそこかもしれません。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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