子作り治療 最前線

新型出生前診断<1>採血のみで3種の染色体疾患を判別

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 国内の出生児の3~5%は、何らかの先天性疾患をもって生まれてくる。そのうち25%程度が染色体の異常によって起こる「染色体疾患」だ。代表的なのが「ダウン症候群(21トリソミー)」(全体の53%)、「18トリソミー」(同13%)、「13トリソミー」(同5%)。現在、この3種の染色体疾患を生まれる前に調べる「新型出生前診断」の臨床研究が進められている。

「新型」とは、どういうことなのか。臨床研究の代表を務める「国立成育医療研究センター」周産期・母性診療センターの左合治彦センター長が説明する。

「染色体疾患を調べる出生前診断には、いくつか種類があります。これまで非確定的検査では『超音波マーカー検査』や『母体血清マーカー検査』があり、確定検査では『絨毛(じゅうもう)検査』と『羊水検査』がありました。新型は母体血を用いた胎児染色体検査(NIPT)と呼び、非確定的検査のひとつです」

 従来の非確定的検査は、超音波や採血のみで検査ができるため母体への負担が少ないが、陽性的中率が10%以下と低い。確定検査は、染色体疾患全般にわたり100%の精度で分かるが、腹部に針を刺すので絨毛検査では100人に1人、羊水検査では300人に1人の確率で流死産のリスクがある。

 一方、新型のNIPTは採血のみの検査で、3種の染色体疾患の陽性的中率が約90%と高い。ただし、あくまで非確定的検査なので、陽性の場合には羊水検査などの確定検査が必要になることは従来と変わらないという。では、なぜ同じ血液検査でも精度が高いのか。

「従来の非確定的検査の血液検査では、お母さんの血液中に含まれる胎盤由来のタンパク質を測定して、総合的に判定します。NIPTの場合は、胎児に由来するわずかなDNA断片を調べて遺伝学的に判定します。臨床研究は、十分な遺伝カウンセリングの提供が可能な限られた施設で、限定的に行われています。マススクリーニングに使われるような安易な検査ではないのです」

 現在、NIPTを実施できる認可施設は全国92医療機関(日本医学会のホームページに一覧)。大半は大学病院や地域の総合周産期センターだ。検査の対象となるのはハイリスク妊婦で、①高年妊婦②従来の非確定的検査で染色体疾患の可能性がある妊婦③過去に染色体疾患の子供を妊娠した妊婦に限られている。

 次回は、新型出生前診断の問題点を取り上げる。

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