老化や病気の大きな原因に 「活性酸素」の正体と防御法

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「老化や病気は体が活性酸素によってさびることが原因」。よく聞く話だが、その意味を十分理解している人は少ないのではないか。人は紫外線や化学物質などさまざまな刺激を受け、体内に酸化力が強い「活性酸素」を作り出す。それが鉄をさびさせるように体の細胞や遺伝子に傷をつける。結果、肌のしわやしみなどを作るなど老化を早め、がんや動脈硬化などさまざまな病気を招くというが、活性酸素とはどんなもので、どうすれば解消できるのか? 弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

「人は大気から酸素を取り入れ、細胞はその酸素を使って食べ物から得た栄養分を分解し、生きていくためのエネルギーを作り出します。その過程で空気から得た酸素の2~3%が体内で電子が欠けた不安定な酸素になる。これが活性酸素(フリーラジカル)です」

 活性酸素はその不安定な状態を解消しようとして激しく動き回り、正常な酸素から電子を奪い取る。奪い取られた酸素は新たな活性酸素となって、正常な酸素から電子を奪い取る。この連鎖により、活性酸素は一気に増えていく。

「活性酸素は、その強い毒性を逆手にとって、白血球のなかの好中球と呼ばれる細胞などでは、体内に侵入した細菌を貪食して殺すための武器となります。その意味ではある程度は必要です。しかし、過剰になった活性酸素は強力な酸化力で体のいたるところで細胞を攻撃し、電子を奪おうとして問題を起こすのです」

 このときもっとも狙われやすいのが細胞を覆っている細胞膜だ。細胞膜は主にタンパク質とリン脂質から出来ており、リン脂質は脂肪酸とリン酸が結合している。この脂肪酸は、活性酸素の電子略奪の餌食になりやすい。

「細胞膜を作っている脂肪酸は分子中の炭素原子が二重結合している部分がある不飽和脂肪酸で、二重結合のない飽和脂肪酸に比べて不安定な構造をしているからです」

 活性酸素によって電子を奪われた細胞膜の脂肪酸は酸化され、徐々に過酸化脂質と呼ばれる有害物質に変化する。電子を奪われた脂肪酸は何とか安定を取り戻そうとして隣の脂肪酸から電子を奪うなど、電子の奪い合いが起こる。この連鎖反応により、細胞の働きが著しく低下してしまう。

「活性酸素は細胞膜だけでなく細胞内も酸化させます。細胞内にあるミトコンドリアという発電所が酸化されれば、エネルギーが作れなくなります。細胞核が酸化されれば、その中の遺伝子が傷つけられて、遺伝情報に狂いが生じて細胞分裂が正確に行われず異常な細胞ができてしまう。つまり、がんの原因にもなるのです」

■添加物の多い食べ物や過激な運動は避ける

 また、活性酸素は悪玉コレステロールを酸化して動脈硬化を進行させたり、神経細胞を障害してアルツハイマー型認知症の原因になったりする。

 では、この厄介ものを無毒化するにはどうしたらいいのか?

 人体には有害なスーパーオキサイドラジカルを酸素と過酸化水素に分解するSOD(スーパーオキシド・ディスムターゼ)といわれる酵素がそなわっている。過酸化水素はSODほどでないとはいえ有害なため、カタラーゼやペルオキシダーゼと呼ばれる酵素で水と酸素に分解して無毒化している。ところがこれらの酵素は加齢と共に減少し、80代ではほとんど分泌されなくなるといわれる。女性は閉経後、抗酸化作用のある女性ホルモンが減少するため、体の酸化が顕著に表れるという。

「最近は過剰な活性酸素を消去する食べ物として、ビタミンCやビタミンEなどのほか、お茶やコーヒー、ワインやチョコレートなどの嗜好品や果物の皮や野菜などに多く含まれるポリフェノールが注目されています」

 もちろんこれらの摂取も大切だが、まずは活性酵素を大量発生させる物質を遠ざけ、生活習慣を改めることだ。

「不規則でストレスの多い生活、喫煙習慣は改めましょう。食品添加物の多いハムやソーセージ、カップ麺といった加工食品や菓子類などには注意が必要です。激しい運動も酸素の消費量が多くなるぶん、活性酸素の発生量も増えていきます。紫外線に当たると、その刺激で皮膚組織に大量の活性酸素を発生させ、それがメラニン色素の形成を促進してしわやしみの原因になります」

 レントゲン撮影や放射線治療などで放射線を浴びる回数を気にした方がいい。また、工場や自動車などから排出され大気汚染の原因となる窒素酸化物は強力な酸化物質として知られている。交通量の多い道路周辺で運動するのも活性酸素を増加させる原因になる。覚えておこう。

関連記事