Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

手術が翁長氏の死期早めたか…膵臓がんこそ治療選択が重要

膵臓がんで亡くなった翁長雄志知事(C)共同通信社

 結果論ですが、開腹手術が、死期を早めたのではないか。私は、そう思います。

 膵臓がんは、早期発見されると、手術が第一。教科書的には、それがセオリーです。患者さんは、そう説明されます。その説明は、決して間違いではありませんが、手術が死期を早めたと思えるのは、なぜか。理由を説明しましょう。

 診断時点では、肝転移ははっきりしなかったはずですが、ミクロの世界では肝転移があったはず。1ミリの腫瘍は100万個のがん細胞からなります。それが、診断できるのは1センチ程度になってからなので、画像検査で見つけられないような肝転移があったとしても不思議ではありません。

 その根拠の一つが、術後の痩せられた姿。3年前、女優の川島なお美さん(享年54)は、胆管がんで亡くなる直前の記者会見で、激ヤセぶりが話題になりました。2人に共通する激ヤセの背景にあるのが、がん悪液質だと思うのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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