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オルソケラトロジー 睡眠中の装着で裸眼視力が1.0以上に

福本光樹副院長
福本光樹副院長(提供写真)
福本光樹副院長 南青山アイクリニック東京(東京・港区)

 寝ている間に特殊なコンタクトレンズを装着し、日中はレンズを外して裸眼で過ごせる近視矯正法「オルソケラトロジー(以下、オルソ)」。日本では2009年に認可され原則20歳以上に制限されていたが、昨年12月から子供にも解禁された。

 なぜ、レンズを使わず日中の近視が矯正できるのか。

 治験前から臨床研究に関わり、2000例以上の処方実績をもつ福本光樹副院長が言う。

「近視は角膜や水晶体の屈折力が強すぎたり、眼軸長(眼の長さ)が長いために、光が網膜より手前で焦点を結んでしまう状態です。メガネやコンタクトレンズは、レンズによって光の進路を変えて焦点を網膜に合わせます。オルソは角膜表層の形を変えることで屈折率を変えます。睡眠中に特殊なハードコンタクトレンズを装着することで、角膜のカーブの形を一時的に平坦化させて矯正するのです」

 朝起きてレンズを外した後もクセが付くので、一定時間(日中)は角膜の形が保たれているという仕組みだ。

 そのため基本的には毎晩、睡眠中に最低6時間以上装着する。装着をやめれば、角膜の形は数日で元の状態に戻る。近視が軽度なら、2~3日に1回の装着でいい場合もあるという。

 近視の程度は、屈折度の単位である「ジオプトリー(D)」で表す。軽度は「マイナス3D以下」、中等度は「マイナス3D~マイナス6D」、強度近視は「マイナス6D以上」と分類されている。

「オルソの適応は、角膜が透明で手術の既往がないこと。近視の程度は中等度までですが、推奨されているのは『マイナス4D』くらいまでです。乱視があっても軽度なら問題なく矯正できます。早い人なら翌日から効果が持続し始め、平均1週間前後で裸眼視力1・0~1・5が一日中持続するようになります」

 当然ながら遠視は適応外で、老視があれば他の矯正法と同じで老眼鏡が必要になる。

最適なフィッティング時の写真
最適なフィッティング時の写真(提供写真)
「近視進行抑制効果」にも注目

 オルソ用レンズの管理の仕方は特別なことはなく、通常のハードコンタクトレンズと同じ。起こりうる合併症も同じで、使い方やレンズケアが悪いと、角膜炎や感染症、ドライアイなどの原因になる。

 また、レンズを外している状態では、暗い場所で光がにじむ場合があるので、夜間の自動車などの運転は注意が必要になるという。

 では、子供は何歳から使用が可能なのか。

「それも通常のコンタクトレンズと同じで、何歳からという決まりはなく、適応年齢は人によって異なります。最低でも自分でレンズの取り扱い、着脱、ケアができることが条件です。若い世代ほど角膜表面の新陳代謝がいいので、それだけ早く矯正効果が出る可能性があります」

 近視矯正効果だけでなく、国内外の研究で「近視進行抑制効果」があることが注目されている。世界的な近視の低年齢化に伴い、韓国、台湾、シンガポールなどはハードコンタクトレンズ使用率の半数以上がオルソ用レンズで占められているという。

 オルソは自由診療で、両眼のレンズ代を含めた費用は同院の場合で19万円(税込み)。その後は3カ月に1回の定期検査を受ける必要がある。

 メガネやコンタクトレンズが煩わしい、レーシック手術は怖い、というなら試してみる価値がありそうだ。

▽1993年防衛医科大学校卒。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院などを経て、2001年南青山アイクリニック横浜院長、08年から現職。〈所属学会〉日本眼科学会、日本眼科手術学会、日本コンタクトレンズ学会など。

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