実録 父親がボケた

<17>想定外の入居者トラブル 他人の部屋で無断失禁老人も

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 特養に入所できる条件は、要介護度3以上だ。父は4で、「排泄や入浴などの日常生活全般に全面的な介助が必要」。唯一、食事だけは介助不要。箸を使えるし、出された食事はいつも完食。食事は施設内で作られるので、できたてホカホカだ。自宅から持参した陶漆器を使えるし、悲惨なムショメシではない。

 ただし、空間認識能力が低いため、とにかく服や床に食べこぼす。食堂の床は父が座る席の下だけ食べ物がこびりついている。母も私も、行ったら必ず拭くようにしている。

 入所してすぐに転倒も経験。尻もち程度でケガもなかったが、私たちが知らないところで頻繁に転んでいるようだ。しかも結構豪快に。「(父は)体が大きいから転ぶと怖いのよね、巻き込まれそうで」と入居女性から言われた。

 彼女は身体的な介助は必要だが、認知症はない。テレビを見て政権批判するくらい聡明で、毎朝新聞も読んでいる。父にも時折話しかけてくれている。私も母も、おそらく父も、彼女のことは好きだ。

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吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

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